「不正改造」どこから違法?
罰金・整備命令を徹底解説
愛車をもっとカッコよくしたい、もっと自分らしくしたい——そう思うのは車好きなら当然のことです。社外品のマフラーに交換したり、ローダウンサスに変えたり、ウィンドウにフィルムを貼ったり。クルマのカスタムはドライブをもっと楽しくしてくれる、趣味の醍醐味のひとつです。
しかし——ちょっと待ってください。その改造、もしかして「不正改造」になっていませんか?
「不正改造なんて、暴走族みたいな改造の話でしょ?」と思った方も多いかもしれません。でも実は、普通のカーショップで売っているパーツを装着したり、ちょっとした見た目の変更をしただけでも、気づかないうちに法律違反になってしまうケースが少なくないのです。私たち整備士が一番気を付けるところなのです。しかも、不正改造は立派な犯罪。罰金や懲役刑が科される可能性もある、かなり厳しい扱いを受けます。
このブログでは、不正改造とは何か、どこからが違法になるのか、整備命令とはどういうものか、罰則や罰金の具体的な内容まで、道路運送車両法などの法律に基づいてわかりやすく解説します。車好きの方はもちろん、普段あまり車のことを気にしていない方にも、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。
この記事でわかること
- 「不正改造」どこから違法?罰金・整備命令を徹底解説
不正改造とは何か?法律で確認しよう

「保安基準」という法律
不正改造を理解するためには、まず「道路運送車両の保安基準」を知っておく必要があります。保安基準とは、道路運送車両法に基づいて定められた、自動車が公道を走るために満たさなければならない技術的な要件のことです。
たとえば、安全に停まれるブレーキ性能、正しく機能する灯火類(ライトやウィンカー)、基準を超えない騒音、十分な視界を確保するためのガラスの透明度……こうした安全・環境・快適に関する基準が細かく定められており、すべての自動車はこれを守ることが求められています。車検は、この保安基準に適合しているかどうかを確認するための定期検査です。
「保安基準に適合していない改造 = 不正改造」です。改造の大小ではなく、基準に合っているかどうかが判断基準になります。
法律の条文を見てみよう(道路運送車両法 第99条の2)
不正改造を禁じているのは、道路運送車両法第99条の2「不正改造等の禁止」です。条文をわかりやすく要約すると、次のようになります。
(道路運送車両法 第99条の2 要約)
車検がある車は「保安基準に適合しなくなるような改造行為そのものが違法」とされている点です。つまり、実際に公道を走っているかどうかは関係なく、改造した時点でアウト。「まだ乗っていない」「サーキット専用にするつもりだった」という言い訳は通りません。
整備不良と不正改造、どう違う?
「整備不良」と「不正改造」はよく混同されますが、実は別物です。整備不良は、改造していないのに部品の劣化や故障などで保安基準を満たさなくなってしまった状態を指します。たとえば、ブレーキランプが球切れで点かなくなっているケースが典型例です。
一方、不正改造は意図的な改造・パーツの取り付け・取り外しによって保安基準に不適合な状態を作り出す行為を指します。たとえ「知らずにやってしまった」場合でも、不正改造として扱われる可能性があります。
罰則の重さも異なります。整備不良は違反点数と反則金(普通車の場合7,000円程度)が科されることが多いのに対し、不正改造は懲役や高額の罰金が科される場合もある、より重い犯罪として扱われます。
足廻りの詳しい記事です。参考にどうぞ!
どこからが不正改造?具体的な事例を解説

一口に「不正改造」といっても、その種類は多岐にわたります。ほんの一例ですが身近なカスタムの中に潜む落とし穴を、ひとつずつ確認していきましょう。この他にもまだ、不正改造になる場合はたくさんあります。
窓ガラスへの着色フィルム貼り付け
カーフィルムやスモークフィルムの貼り付けは、カスタムの中でも非常に身近なものですが、場所と透過率によっては不正改造に当たります。道路運送車両の保安基準第29条では、フロントガラスおよび運転席・助手席の側面ガラスについて「可視光線透過率が70%以上」でなければならないと定めています。70%未満のフィルムを貼った時点で不正改造となります。注意が必要なのは、透明に見えるフィルムでも基準を下回る場合があること。現代の自動車ガラスはもともとの透過率が70%に近いものが多く、無色透明なフィルムを重ねただけで基準割れになってしまうケースがあります。後部座席の窓やリアガラスへの貼り付けは規制の対象外ですが、視界を著しく妨げる場合は問題になることがあります。
消音器(マフラー)の改造・取り外し
マフラーの改造はカスタムの定番ですが、法律的には非常にデリケートな領域です。保安基準では「内燃機関を原動機とする自動車には、騒音の発生を有効に抑制することができる消音器を備えなければならない」と定められており、マフラーの取り外しや切断は明確に禁止されています。社外品への交換自体は否定されていませんが、騒音規制値をクリアしていることが必要です。平成22年(2010年)4月以降に製造・輸入された車に装着するアフターマーケットマフラーには、近接騒音基準に加えて加速走行騒音基準への適合も求められています。JASMAが認定した製品(JASMA認定品)であれば保安基準に適合しているものが多く、車検でも有効です。音量だけでなく触媒の取り外しも保安基準違反となります。
タイヤ・ホイールのはみ出し
タイヤやホイールが車体(フェンダー)の外側にはみ出している状態は、原則として不正改造に当たります。ただし、2017年の保安基準改正により、乗用車(専ら乗用の用に供する自動車)に限り、タイヤのゴム部分のみであれば10mm未満のはみ出しが認められるよう緩和されています。
ただし、この緩和には重要な条件があります。はみ出しが許容されるのは「タイヤのゴム部分」だけであり、ホイールリム・ホイールキャップ・ナット・ボルトといった金属部品は1mmたりともはみ出してはなりません。また、この緩和が適用される範囲は、タイヤの回転中心を通る垂直面から前方30度・後方50度の範囲内に限られます。太いタイヤや大きいオフセットのホイールを装着する際は、これらの条件をすべて満たしているかどうかを装着前に専門店で確認することが不可欠です。
灯火類(ライト・ウィンカー)の色変更
ヘッドライト、ウィンカー、ブレーキランプなどの灯火類には、それぞれ使用できる光の色が法律で定められています。今はヘッドライトは「白色」のみ(昔は黄色でも大丈夫だった)が認められており、青みが強いと整備不良・不正改造と判断されることがあります。ウィンカーは「橙色(アンバー)」と定められており、白色や赤色のウィンカーは不正改造です。ブレーキランプは「赤色」と定められています。「車検対応品」と表示された社外バルブを使っていても、装着する車との組み合わせや検査員の目視判断によっては不適合とされることがあります。ヘッドライトのケルビン値が高いHIDバルブなどは特に注意が必要です。
車高を過度に下げる(ローダウン)
車高調やローダウンスプリングやエアサスなどで車高を下げることはよく行われていますが、程度によっては不正改造になります。保安基準では「最低地上高が9cm(90mm)以上」確保されていることが必要です。スプリング式サスペンションの場合、社外品への交換自体は認められていますが、ノーマルのスプリングをカットすることや、錆がひどい状態では不適合となります。また、エア式・リーフ式・トーションバー式のサスペンションを異なる種類のサスペンションに交換する場合は、構造変更申請が必要になります。
フロントガラスへのステッカー貼り付け
フロントガラスへのステッカー貼り付けも要注意です。車検標章(車検シール)や点検整備済みステッカーなど、法律で認められているもの以外のステッカーをフロントガラスに貼ることは、不正改造として取り締まりの対象になります。ルームミラーの後ろ側の一定の範囲内に許可されているものもありますが、「お気に入りのキャラクターのシールを貼っただけ」でも、場所によっては不正改造と判断される可能性があります。
スピードリミッターの解除
大型トラックなどの事業用自動車には、速度抑制装置(スピードリミッター)の装備が義務付けられています。この装置を解除したり取り外したりすることは、保安基準第8条に違反する不正改造です。一般の乗用車(普通車・軽自動車)については、スピードリミッターの解除そのものを直接禁止する個別の保安基準条文は存在しません。ただし、解除のためにECU(エンジンコントロールユニット)を書き換えた結果、排出ガス規制値をクリアできなくなった場合は保安基準不適合となり、不正改造とみなされるリスクがあります。「条文がないから何でもOK」ではなく、改造の結果として保安基準に違反すれば不正改造になる点は変わりません。
ウィングやエアロパーツのはみ出し・突起
大型リアウィングや派手なエアロパーツの装着も、寸法や形状によっては不正改造になります。保安基準では、リアウィングの両端が車体の外側から165mmより外側に取り付けられている場合や、バンパー最下部より低い位置に半径5mm未満の鋭利な角が存在する場合は不正改造とされます。歩行者への接触危険性から定められているルールです。
不正改造の罰則・罰金はどのくらい?

不正改造行為を行った者への罰則
不正改造を実施した人(改造を行った整備士や整備工場、あるいは自分でDIY改造した本人)に対しては、道路運送車両法第108条により以下の罰則が定められています。
これは刑事罰です。前科がつく可能性のある、非常に重い処分です。「改造するだけで懲役になるの?」と思う方もいるかもしれませんが、法律ではそう定められています。プロの整備工場が不正改造を行った場合には、さらに業務停止命令が科せられることもあります。私たちが最も気を付けなければいけないことです。
不正改造車を使用した者(ドライバー・所有者)への罰則
不正改造した車を実際に使用・運転している人(必ずしも改造を行った本人とは限りません)に対しては、まず「整備命令」が発令されます。整備命令については次の章で詳しく説明しますが、命令に従わなかった場合には以下の罰則があります。
さらに使用停止命令に従わず車を使い続けた場合は、
という非常に重い処分が待っています。
整備工場(業者)に対する追加処分
もし整備工場やディーラーなどのプロの業者が不正改造を行った場合、地方運輸局より3ヶ月以内の事業停止命令が出される可能性があります。さらに、その整備工場が国土交通省から「指定自動車整備事業者」の指定を受けていた場合、保安基準適合証等の交付停止や、最悪の場合は指定そのものが取り消されることもあります。これは私たちにとって、死活問題です。
マフラーも気を付けなければいけないです。参考にどうぞ!
整備命令とは?発令されたらどうなるか

整備命令の仕組み
「整備命令」は、道路運送車両法第54条(整備命令等)および第54条の2(不正改造に係る整備命令等)に基づく制度です。街頭検査(路上での抜き打ち検査)などで不正改造車と認められた場合、地方運輸局長または運輸支局長が自動車の使用者に対して整備を命じることができます。
整備命令が発令されると、車のフロントガラスに「整備命令標章」と呼ばれるステッカーが貼り付けられます。このステッカーはいわば「この車は不正改造車です」という公的な証明書のようなものです。
整備命令標章(ステッカー)が貼られたら15日以内に対応が必要
整備命令標章が貼られた車の使用者には、15日以内に不正改造箇所を適正に整備した上で、管轄の運輸支局または自動車検査登録事務所に車両を持ち込んで確認検査を受ける義務があります。
確認検査で問題なければ標章を剥がしてもらい、改善完了となります。期限内に対応しなければ非常に厳しい罰則が待っています。
期限(15日)を過ぎるとどうなる?
15日以内に現車提示をしない場合や、整備命令標章を不正に剥がした場合は、自動車検査証(車検証)とナンバープレートが没収され、最大6ヶ月間の車両使用停止命令が出されます。
さらに、命令に従わずに車を使い続けた場合には、50万円以下の罰金という重い処分が科されます。不正改造は「見逃してもらえれば儲けもの」という甘い考えで済む話ではありません。
街頭検査とはどんなもの?
全国の運輸局・運輸支局では、警察や自動車技術総合機構などの関係機関と連携し、一般道路での「街頭検査」を定期的に実施しています。また、毎年6月には「不正改造車を排除する運動」の強化月間として、集中的な取り締まりが行われます。
街頭検査では、通行中の車両を随時停車させ、保安基準への適合状況を確認します。当然、普通に走っていても止められる可能性があります。「車検は通った」「一度も捕まったことがない」から安心とは限らないのです。
リフトアップもやりすぎは不正改造になります。参考にどうぞ!
「知らなかった」は通用しない!正しい改造のやり方

構造変更申請という選択肢
保安基準を超えるような大きな改造をしたい場合でも、すべてが不可能というわけではありません。「構造変更申請(改造自動車の審査)」を行うことで、一定の範囲内で保安基準外の改造を認めてもらえる場合があります。
たとえば、エンジンの換装や車体の大幅な改造、サスペンションの種類変更などは、構造変更申請を経て認められることがあります。改造を施した後、自動車検査独立行政法人などの機関に車両を提示し、安全性の確認を受けることが必要です。
改造前に専門家へ相談しよう
保安基準は非常に細かく、また改正が行われることもあります。「これは大丈夫だろう」という自己判断は危険です。カスタムを考えているなら、まず認証工場や指定整備工場に相談してみましょう。プロの整備士であれば、その改造が合法かどうかを正確に判断してくれます。
また、パーツを購入するショップに「保安基準適合品か」を確認するのも大切です。「車検対応品」と書いていても、取り付け方法や車種によっては不適合になることがあります。
不正改造車を見かけたら通報できる
自分の車ではなく、街中で不正改造車を見かけた場合、各地方運輸局や運輸支局に設置されている「不正改造車・迷惑黒煙車情報提供窓口」に通報することができます。ナンバープレートに記載されている地域を管轄する窓口に情報を提供してください。
不正改造車による事故は、実際に死傷者を出す深刻なケースもあります。他人事と思わず、安全な道路環境を守る意識を持つことが大切です。
車高調とダウンサスに関する記事です。参考にどうぞ!
よくある質問(Q&A)
A: はい、あります。車検合格後に改造を行った場合や、車検では見落とされた改造がある場合は不正改造として扱われます。車検はあくまでも検査した時点での適合確認であり、その後に行った改造については対象外です。また、街頭検査では車検では確認されなかった部分が指摘されることもあります。
A: 使用者(ドライバー・所有者)に対しては、まず整備命令が発令されます。改造を行ったのが前のオーナーであっても、現在の使用者がその車で公道を走っていれば、整備命令の対象になります。中古車を購入する際は、保安基準に適合しているかどうかを事前に確認することをおすすめします。
A: 道路運送車両法第99条の2は「有効な自動車検査証の交付を受けている自動車」について改造を禁じています。したがって、車検証のある車を保安基準外に改造した時点で不正改造となります。車検が残っているうちはサーキット専用だから、公道を走らないからという理由は通りません。
A: カスタムの内容によります。ステッカーやデカールを貼るだけなら基本的に問題ありませんが、フロントガラスへの貼り付けや、過度な装飾は不正改造になりえます。塗装の変更は基本的に問題ありませんが、特定の条件を満たす変更は注意が必要です。判断が難しい場合は専門家に相談しましょう。
A: 改造を実施した業者(整備士・整備工場)が罰則の主な対象になりますが、使用者(依頼した側)も不正改造車を運転することで整備命令の対象になります。「業者に頼んだから自分は関係ない」とはなりません。改造を依頼する際は、その改造が適法かどうかを確認する責任も使用者にあります。
A: 整備命令標章を不正に剥がす行為も、車両使用停止の対象となります。絶対に自分で剥がしてはいけません。標章は、整備完了後に運輸支局で確認検査を受けた際にはじめて取り外してもらえます。
まとめ
不正改造は「暴走族の車だけの話」ではなく、普通のクルマのカスタムの中にも潜んでいるリスクです。
不正改造とは、道路運送車両の保安基準に適合しなくなるような改造・装置の取り付け・取り外し行為のことを指し、道路運送車両法第99条の2によって明確に禁止されています。知らなかった場合でも、法律上は犯罪として扱われます。
具体的な不正改造の例は多岐にわたります。着色フィルムの可視光線透過率違反、マフラーの切断・取り外しや基準外への交換、タイヤのフェンダーはみ出し、灯火類の色変更、過度なローダウン、フロントガラスへのステッカー貼り付け——これらは身近なカスタムの中に紛れている落とし穴です。知らずにやっている場合もあります。
罰則は改造を行った者に対して6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金。整備命令が発令された使用者が従わない場合は50万円以下の罰金と使用停止命令、さらに使用停止命令を無視すると6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という厳しい制裁が科されます。
大切なのは、カスタムを楽しむ前に保安基準を理解し、私たち整備士に相談する習慣を持つことです。合法的な改造の範囲を守れば、愛車をより個性的に、そして安全に楽しむことができます。愛車と自分、そして道路を走る他の人たちを守るために、正しい知識を持ってカーライフを楽しんでください。
LINK Motors
参考法令・情報源
- 道路運送車両法 第99条の2(不正改造等の禁止)
- 道路運送車両法 第54条・第54条の2(整備命令等・不正改造に係る整備命令等)
- 道路運送車両法 第108条(罰則)
- 道路運送車両の保安基準(国土交通省)
- 一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会(JASPA)
- 一般社団法人 日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会(NAPAC)
- 不正改造車排除強化月間(国土交通省・自動車整備振興会連合会)