【完全版】タイヤチェーンの歴史と種類・取付方法・チェーン規制を徹底解説
雪が降り積もる真冬の朝、窓の外を見ると道路が真っ白。スタッドレスタイヤを履いているから大丈夫だろうと思っていたら、高速道路でチェーン規制がかかっていて立ち往生してしまった…そんな経験をされた方はいらっしゃいませんか。あるいは、年に一度あるかないかの降雪のために、高価なスタッドレスタイヤを購入するのはためらわれるという方も多いのではないでしょうか。
タイヤチェーンは、雪道や凍結路面を走行するための必須アイテムです。しかし、その歴史や種類、正しい取り付け方法を知らない方も少なくありません。特に2018年からは新しいチェーン規制が導入され、スタッドレスタイヤを装着していても、チェーンがなければ通行できない区間が設けられるようになりました。これは単なる交通ルールの変更ではなく、近年の異常気象による集中的な大雪が背景にあります。
この記事では、タイヤチェーンの誕生から現代までの歴史、金属製・非金属製・布製といった種類別の特徴、実際の取り付け方法、そして新しいチェーン規制について、初心者の方にも分かりやすく、親しみやすく解説していきます。雪道で安全に走行するために、そして万が一の事態に慌てないために、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。
この記事で分かること
タイヤチェーンが生まれた歴史的背景と、その後の技術革新の流れを理解できます。1904年にアメリカで誕生した金属チェーンから、1990年代にヨーロッパで開発された布製チェーンまで、約100年にわたる進化の過程をたどることができます。
金属製、非金属製、布製という3つの主要な種類について、それぞれの構造、メリット、デメリット、価格帯、適した使用場面を詳しく知ることができます。自分の車の使用状況や予算に合わせて、どのタイプを選べばよいかの判断材料が得られます。
実際にタイヤチェーンを装着する際の手順を、種類ごとに具体的に解説します。どのタイヤに装着するのか、どのような場所で作業を行うべきか、装着後にどんな確認をすればよいかなど、実践的な知識が身につきます。
2018年から導入された新しいチェーン規制について、その背景、対象区間、規制の条件、認められるチェーンの種類など、ドライバーが知っておくべき重要な情報を網羅的に理解できます。
- 【完全版】タイヤチェーンの歴史と種類・取付方法・チェーン規制を徹底解説
- タイヤチェーンの歴史〜雪道を征服するための人類の挑戦
- タイヤチェーンの種類と特徴
- タイヤチェーンの取り付け方
- チェーン規制について
- おわりに
タイヤチェーンの歴史〜雪道を征服するための人類の挑戦

タイヤチェーンの誕生
自動車が一般に普及し始めた20世紀初頭、冬の雪道は大きな障害でした。当時の人々は、タイヤが雪や氷の上で滑ってしまうという問題に直面していました。最初は縄や植物のつるをタイヤに巻きつけるという原始的な方法が試されていたそうです。しかし、これらの素材は耐久性に欠けており、すぐに切れてしまうという問題がありました。
そこで登場したのが、アメリカ人のハリー・D・ウィードという人物です。彼は1904年に、耐久性の高い金属製のチェーンをタイヤに装着するというアイデアを実現し、「Grip-Tread for Pneumatic Tires」として特許を取得しました。これが現代のタイヤチェーンの原型となります。
ウィードのアイデアは革命的でした。金属製のチェーンは植物性の素材と比べて圧倒的に耐久性が高く、雪や氷の路面にしっかりと食い込むことができました。この発明により、冬季でも自動車での移動が格段に容易になったのです。当時としては画期的な発明だったことは間違いありません。
金属チェーンの時代
1904年の発明以降、長い間、タイヤチェーンといえば金属製が主流でした。鋼鉄製の鎖を編み状につないだ構造は、シンプルながらも効果的で、雪道や凍結路面で強力なグリップ力を発揮しました。
金属チェーンには大きく分けて2つの形状がありました。ひとつは「ラダー型」と呼ばれる、はしご状に鎖をつないだタイプ。これは前後方向のグリップに優れていましたが、横方向の力には弱いという特徴がありました。もうひとつは「亀甲型」と呼ばれる、亀の甲羅のような模様で全体を覆うタイプ。こちらは全方向にバランスの良いグリップ力を発揮し、乗り心地も安定していました。
金属チェーンの最大の利点は、その圧倒的なグリップ力と価格の安さでした。特に新雪や深い積雪、凍結路面では、他のどのタイプよりも優れた性能を発揮します。豪雪地帯では、スタッドレスタイヤの上からさらに金属チェーンを装着することもあるほどです。
しかし、金属チェーンにはいくつかの欠点もありました。まず、重量があること。鋼鉄製なので当然ながら重く、装着作業は力仕事でした。特に冬の寒い中での作業は、手がかじかんで非常に大変だったといいます。また、走行中の騒音や振動が大きく、乗り心地が悪くなるという問題もありました。さらに、雪のない乾燥路面を走るとチェーンが切れやすく、錆びやすいというメンテナンス上の課題もありました。
1980年代頃のスキーブームの時代には、友人たちと車でスキー場に行く際、途中でタイヤチェーンの着脱を誰がするかが重要な問題だったという話もあります。それほど金属チェーンの装着は大変な作業だったのです。
非金属チェーンの登場と進化
金属チェーンの欠点を克服するため、1980年代から1990年代にかけて、新しいタイプのチェーンが開発されました。それが非金属製のタイヤチェーンです。
非金属チェーンは、ゴムやポリウレタン樹脂などの素材で作られています。金属チェーンに比べて軽量で、騒音や振動が少なく、乗り心地が格段に向上しました。また、装着も比較的簡単になり、力のない女性や高齢者でも扱いやすくなりました。
非金属チェーンにも様々な形状があります。タイヤ全体を覆う「ネット型」は高いグリップ力が特徴で、金属チェーンに近い性能を発揮します。一方、滑り止め部分がいくつかのパーツに分かれた「分離型」は、装着や収納が簡単ですが、グリップ力はネット型より劣ります。
特筆すべき製品として、スイスの「Yeti Snow net」(イエティスノーネット)があります。ラバーネット製のタイヤチェーンで、スイスをはじめ日本、ドイツ、アメリカなど19カ国で特許を取得しています。イエティは、金属チェーンの欠点をほぼすべて解消し、メリットだけを残した製品として高く評価されています。静粛性とグリップ力はトップレベルで、欧州ではフォルクスワーゲン、フィアット、プジョーなどが純正品または推奨品として指定しているほどです。
ただし、非金属チェーンにも欠点はあります。金属チェーンに比べると価格が高く、特にイエティのような高性能製品は相当な価格になります。また、ゴムや樹脂は経年劣化するため、使用しなくても5年程度で寿命を迎えるという点も注意が必要です。
布製チェーンの革新
タイヤチェーンの歴史において、最も新しい革新が布製チェーン(スノーソックス、タイヤソックスとも呼ばれる)です。
布製タイヤチェーンは1996年にノルウェーのボード・ロトヴェイト氏によって発明されました。タイヤ業界での豊富な経験を持つロトヴェイト氏は、ある日スキーの技術にヒントを得て、「布で摩擦を制御できないか」と考えたそうです。このアイデアが、それまでの常識を覆す「繊維による滑り止めチェーン」というコンセプトにつながりました。
布製チェーンの最大の特徴は、その取り付けの簡単さです。基本的にタイヤに被せるだけで装着が完了するため、力を使わず、数分で作業が終わります。重量も非常に軽く、コンパクトに収納できるため、トランクのスペースをほとんど取りません。また、走行時の騒音や振動がほとんどないのも大きな魅力です。
布製チェーンの仕組みは独特です。特殊な繊維素材が、雪や氷の表面にできる水の膜を吸収し分散させることで、滑りにくくしています。雪道だけでなくアイスバーンでも高い機能性を発揮します。世界中のスノーチェーン規格が定めている機能、安全性、耐久性をクリアしており、金属製チェーンと同等のグリップ力を持っています。
布製チェーンは特に都市部のドライバーに人気があります。年に数回しか雪が降らないような地域では、高価なスタッドレスタイヤを購入するより、コンパクトで手軽な布製チェーンを車に常備しておく方が合理的だからです。また、最近の電気自動車やハイブリッド車は、ホイールとボディの隙間(クリアランス)が狭い車種が多く、金属チェーンが装着できないケースがあります。そのような車にも、薄型の布製チェーンなら装着できることが多いのです。
ただし、布製チェーンにも欠点があります。最大の問題は耐久性です。雪に覆われたテストトラックでは数百kmの走行が可能という結果が出ていますが、使用により破れたりほつれたりする可能性があります。また、装着したまま雪道や凍結路に駐車すると路面に張り付いてしまい、走り出した際に破損するリスクもあります。金属チェーンや非金属チェーンに比べると、使い捨てに近い感覚で使う製品と言えるかもしれません。
技術革新の方向性
タイヤチェーンの歴史を振り返ると、その進化の方向性が見えてきます。初期の金属チェーンは「最大限のグリップ力」を重視していましたが、時代とともに「使いやすさ、軽量性、静粛性」が重視されるようになってきました。
これは自動車の普及状況や、ドライバーの属性の変化と密接に関係しています。かつては男性が主なドライバーでしたが、現代では女性や高齢者も多く運転します。また、豪雪地帯に住む人だけでなく、普段は雪の降らない都市部に住む人も、たまの降雪やレジャーのためにチェーンを必要とします。こうした多様なニーズに応えるため、タイヤチェーンは進化を続けてきたのです。
現在では、用途や予算、車種に応じて様々なタイプのチェーンから選べるようになりました。豪雪地帯で頻繁に使うなら耐久性の高い金属チェーンや非金属チェーン、都市部で緊急時の備えとして持っておくなら布製チェーン、というように使い分けることができます。
タイヤチェーンの種類と特徴
金属製チェーン〜伝統と実力
金属製チェーンは、タイヤチェーンの中で最も歴史が長く、今なお多くの支持を得ているタイプです。主に鋼鉄製で、鎖を編み状にしてタイヤを覆う構造になっています。
金属製チェーンの最大の強みは、そのグリップ力です。積雪路(特に新雪)や凍結路でのグリップ力は最強で、豪雪地帯では運送会社のトラックなどがスタッドレスタイヤに重ねて金属チェーンを装着することも多いそうです。これは、金属チェーンの輪が大きく、走行時に雪や氷への食い込みが他の素材と比べて強力になるためです。
また、価格の安さも大きな魅力です。年に一度雪が積もるかどうか分からないような地域で、緊急用としてタイヤチェーンを常備しておきたいという場合、金属チェーンは最もコストパフォーマンスが良い選択肢となります。数千円から購入できる製品もあり、予算が限られている方には最適です。
形状には主に2種類あります。「ラダー型」は、鎖をはしご型につないだ構造で、前後方向のグリップ性能に優れています。ただし、接地部が進行方向に対して横に並んだ部材のみで構成されているため、横滑りには弱いという特性があります。一方、「亀甲型」は、全方向にバランスの良いグリップ力を発揮し、ラダー型よりも乗り心地が安定します。
金属製チェーンの欠点: 取り付けが大変で、金属チェーンは4種類あるタイヤチェーンの素材の中で最も取り付けに手間がかかります。重量があり、冬の寒さの中での作業は手がかじかんで非常に辛いものです。走行中の騒音と振動も大きく、乗り心地は明らかに悪化します。また、雪の少ない路面を長く走ると切れやすく、錆びやすいという性質があります。
それでも金属製チェーンが今なお生産され続けているのは、数多い欠点を凌駕する積雪路・凍結路でのグリップ力と価格の安さという明確なメリットがあるからです。本格的な雪道を走る必要があり、予算も抑えたいという方には、今でも金属製チェーンが最良の選択肢となります。
非金属製チェーン〜バランスの良さ

非金属製チェーンは、ゴムやポリウレタン樹脂などの素材で作られたタイヤチェーンです。金属チェーンの欠点を改善しつつ、十分な性能を維持するというコンセプトで開発されました。
非金属製チェーンの大きな利点は、金属製に比べて騒音や振動が少ないことです。ゴムや樹脂は路面との摩擦音が小さく、走行中の不快感が大幅に軽減されます。また、金属製よりも軽量で、装着も比較的簡単です。力のない女性や高齢者でも、それほど苦労せずに取り付けることができます。
グリップ力も十分にあります。タイヤ全体を覆うネット型の製品であれば、金属チェーンに匹敵する性能を発揮します。雪道や凍結路面での走行安定性は高く、一般的な降雪であれば問題なく対応できます。耐久性も金属製より高く、適切に使用すれば複数シーズン使い続けることができます。
非金属製チェーンにも形状によって特性が異なります。「ネット型」はタイヤ全体を覆うタイプで、高いグリップ力が特徴です。ただし、金属製より重く、取り付けに力が必要で、収納時もかさばりやすいというデメリットがあります。一方、「分離型」は滑り止め部分がいくつかのパーツに分かれたタイプで、全体を覆わなくて済むため装着や収納が簡単ですが、その分滑り止め効果はネット型より劣ります。
価格は金属製より高めですが、性能と使いやすさのバランスを考えると、多くのドライバーにとって最も現実的な選択肢と言えるでしょう。定期的に雪道を走る必要があり、快適性も重視したいという方には、非金属製チェーンがおすすめです。
保管の注意: ゴムや樹脂は経年劣化するため、使用しなくても5年程度で寿命を迎えます。高温多湿となる場所(車のトランクや屋外のスチール製物置など)での長期保管は避け、涼しく乾燥した場所に保管する必要があります。
布製チェーン〜手軽さの極致
布製チェーン(スノーソックス、タイヤソックス)は、タイヤチェーンの中で最も新しいタイプです。特殊な繊維素材で作られており、まるでタイヤに靴下を履かせるような感覚で装着します。
布製チェーンの最大の魅力は、その取り付けの簡単さです。基本的にタイヤの上から被せるだけで装着が完了します。力を使わず、数分で作業が終わるため、女性や高齢者、チェーンの取り付けに慣れていない初心者でも安心して使えます。実際の装着手順は、停車している車のタイヤの上から布製チェーンを被せ、できるだけ下まで広げます。次に、タイヤが半転するよう車を少し動かし、地面に接触していた部分を覆えば完了です。手作業の時点で多少ズレがあっても、走行中に自然にセンタリングされるため問題ありません。
重量も非常に軽く、コンパクトに収納できます。金属チェーンや非金属チェーンがかなりのスペースを取るのに対し、布製チェーンは小さなバッグ程度のサイズに収まります。トランクの限られたスペースを有効活用したい方には大きなメリットです。
走行時の騒音や振動がほとんどないのも大きな特徴です。布製なので路面を叩く音はほとんどせず、乗り心地への影響も最小限です。快適なドライブを維持したまま、雪道に対応できます。
性能面でも、決して侮れません。特殊繊維が雪や氷の表面の水膜を吸収・分散させることで滑りにくくし、世界中のスノーチェーン規格が定める基準をクリアしています。雪道だけでなくアイスバーンでも効果を発揮します。
布製チェーンは、最近の電気自動車やハイブリッド車にも適しています。これらの車種は、バッテリーなどの関係でホイールとボディの隙間(クリアランス)が狭いことが多く、従来の金属チェーンが装着できないケースがあります。薄型の布製チェーンなら、こうした車種でも装着できることが多いのです。
都市部に住んでいて、年に数回しか雪が降らないという方には特におすすめです。高価なスタッドレスタイヤを購入する必要はないけれど、突然の降雪に備えておきたいという場合、コンパクトで手軽な布製チェーンは理想的な選択肢となります。
布製チェーンの弱点: 最大の問題は耐久性の低さです。雪に覆われたテストトラックでは数百kmの走行が可能という結果が出ていますが、実際の使用では破れたりほつれたりするリスクがあります。また、装着したまま雪道や凍結路に停めると路面に貼り付き、走り出した際に破損するリスクがあります。駐車する際は必ず取り外す必要があります。走る速度は、乗用車であれば時速50km以下が推奨されています。
スプレー式について
タイヤチェーンを探していると、「スプレー式チェーン」という製品を見かけることがあります。これは、天然樹脂をアルコールで溶かしたグリップ増加成分をタイヤに噴霧することで、一時的に滑りにくくするケミカル用品です。
スプレー式の利点は、何といっても手軽さです。タイヤに吹き付けるだけで、装着作業は不要です。緊急時に少しだけ雪道を走る必要がある場合などには便利かもしれません。
重要な注意点: スプレー式のように薬剤をタイヤに吹き付けるタイプのものは、チェーン規制中のチェーンとして認められていません。つまり、後述するチェーン規制が実施されている区間では、スプレー式では通行できないのです。あくまでも補助的なグリップ向上対策品であり、本格的な雪道走行には不向きです。
どのタイプを選ぶべきか
ここまで3つの主要なタイプを見てきましたが、結局どれを選べばよいのでしょうか。これは、あなたの使用状況や優先順位によって異なります。
豪雪地帯に住んでいて、頻繁に深い雪道を走る必要がある方には、金属製チェーンをおすすめします。最強のグリップ力は何物にも代えがたく、重量や騒音といった欠点を上回る価値があります。また、予算を抑えたい方にも金属製が適しています。
定期的に雪道を走るけれど、快適性も重視したいという方には、非金属製チェーンが最適です。性能と使いやすさのバランスが良く、多くのドライバーにとって「ちょうど良い」選択肢となります。耐久性も高いため、長期的に見ればコストパフォーマンスも良好です。
年に数回しか雪が降らない都市部に住んでいる方や、突然の降雪やレジャーでの使用を想定している方には、布製チェーンがおすすめです。取り付けが簡単で、収納もコンパクト。緊急時にすぐ使えるという安心感は大きな価値があります。特に、電気自動車やハイブリッド車で、クリアランスが狭い車種をお持ちの方にも最適です。
耐久性も考慮に入れて選ぶことが大切です。金属製は使い方次第で複数シーズン使えますが、メンテナンスが必要です。非金属製は5年程度が寿命の目安。布製は消耗品として考え、ワンシーズンか数回の使用を想定しておくとよいでしょう。

タイヤチェーンの取り付け方
雪道でタイヤチェーンを取り付ける場面を想像してみてください。寒さで手がかじかみ、降り続く雪の中での作業は決して楽ではありません。しかし、正しい手順と準備をしておけば、作業はずっとスムーズになります。この章では、実際の取り付け作業について、種類ごとに詳しく解説していきます。
取り付け前の準備
タイヤチェーンの取り付けは、事前の準備が成功の鍵を握ります。雪の中で慌てて説明書を読むような事態を避けるため、以下の準備を必ずしておきましょう。
まず、自宅で取り付けの練習をすることを強くおすすめします。晴れた日に、説明書を見ながら実際に装着してみてください。最初は時間がかかるかもしれませんが、一度経験しておくことで、実際の雪道での作業が格段に楽になります。特に金属チェーンは複雑な構造なので、練習は必須と言えます。
自分の車の駆動方式を確認しておくことも重要です。タイヤチェーンは基本的に駆動輪に装着します。前輪駆動車(FF車)なら前輪に、後輪駆動車(FR車)なら後輪に装着するのが基本です。四輪駆動車(4WD)の場合、多くは前輪に装着しますが、車種によっては後輪の場合もあるため、取扱説明書で確認してください。
準備しておくべきもの: 車のトランクには、チェーン本体だけでなく、作業用手袋、懐中電灯、軍手または滑り止め付き手袋、タオルやウェットティッシュ(手の汚れを拭く用)、膝当てや敷物(地面に膝をつく場合)を一緒に入れておくと便利です。特に作業用手袋は必須で、冬の寒さから手を守るだけでなく、金属チェーンで手を傷つけることも防げます。
タイヤのサイズも確認しておきましょう。タイヤチェーンは車種やタイヤサイズに合わせて選ぶ必要があります。タイヤの側面に「195/65R15」のような表示があるので、これをメモしておき、チェーン購入時に店員に伝えてください。サイズが合わないチェーンは装着できないか、走行中に外れる危険があります。
どこで装着すべきか

タイヤチェーンの装着場所も重要です。理想は、雪道に入る前の安全な場所で装着することです。
高速道路では、チェーン規制区間の手前に「チェーン着脱場」が設けられています。これは、安全にチェーンを着脱できるように設計された退避スペースです。規制が発令されると、係員がチェーン装着の確認を行うため、その手前で装着することになります。
一般道では、道の駅やコンビニエンスストアの駐車場、道路の路肩(十分に広く、安全が確保できる場所)などで装着します。ただし、交通の妨げにならない場所を選ぶことが大切です。路肩での作業は特に危険なので、可能な限り避け、駐車場などの安全な場所を選んでください。
絶対に避けるべき場所: 交通量の多い道路の路肩、カーブやトンネルの中や付近、坂道の途中などでの作業は極めて危険です。もし雪道に入ってからチェーンが必要だと気付いた場合は、無理に進まず、一旦引き返して安全な場所で装着することをおすすめします。
装着作業中は、ハザードランプを点灯させ、可能であれば三角停止板を設置して、他の車に作業中であることを知らせましょう。夜間の場合は、懐中電灯やスマートフォンのライトを活用して、視認性を確保してください。
金属チェーンの取り付け方
金属チェーンは3つのタイプの中で最も取り付けが難しいですが、正しい手順を踏めば確実に装着できます。ここでは、一般的な「ジャッキアップ不要タイプ」の手順を説明します。
まず、チェーンを広げて絡まりがないか確認します。金属チェーンは保管中に絡まりやすいので、装着前に全体をチェックしてください。この時点で、チェーンの表裏、内側外側を確認しておきます。多くの製品には色付きのフックやマークがあり、それが装着時の目印になります。
次に、チェーンをタイヤの後ろ側から車体の下を通して前方に持ってきます。タイヤの上にチェーンを載せるように配置し、タイヤ全体を覆うようにします。この時、チェーンがねじれていないか、均等に配置されているかを確認してください。
内側のフックを留めます。これが最も難しい作業で、車体の下に手を入れて作業する必要があります。手袋をしていると作業しにくいこともありますが、手の保護のためにも装着することをおすすめします。フックが固くて留まらない場合は、車を少し前後に動かして、タイヤの位置を調整してみてください。
外側のフックを留めた後、車を少し前進または後進させて、地面に接していた部分にもチェーンをかけます。通常、タイヤ半周分(約50cmから1m)動かせば十分です。そして、残りのフックを留め、調整用のフックやバンドで全体を締め付けます。
重要な最終確認: 数十メートル低速で走行し、もう一度停車してチェーンのゆるみを確認します。初期走行でチェーンは馴染んでくるため、再度調整が必要になることが多いです。ここで手を抜くと、走行中にチェーンが外れる原因になるので、必ず確認してください。
金属チェーンの装着には慣れるまで20分から30分程度かかることもあります。焦らず、確実に作業を進めることが大切です。
非金属チェーンの取り付け方
非金属チェーンは、金属チェーンより装着が簡単ですが、製品によって手順が異なるため、必ず付属の説明書を確認してください。ここでは、一般的なネット型非金属チェーンの手順を説明します。
まず、チェーンを広げて、どちら側が車体の内側で、どちら側が外側かを確認します。多くの製品では、色分けされたバンドやフックで区別できるようになっています。
タイヤの後ろ側からチェーンを通し、タイヤの上に載せます。この時、チェーンのセンターマーク(多くの製品についている)をタイヤの中心に合わせることが重要です。
内側のフックやバンドを接続します。非金属チェーンは金属製より柔軟性があるため、接続は比較的容易です。ただし、確実にロックされていることを確認してください。
外側のバンドを締めます。多くの非金属チェーンには、自動調整機能がついていて、走行中に適切な張り具合に調整されます。それでも、装着時にある程度しっかり締めておくことが大切です。
車を少し動かして、タイヤを半回転させます。そして、地面に接していた部分のバンドやフックを確認し、必要に応じて調整します。
最後に、ゆっくりと数十メートル走行し、停車してチェーン全体を確認します。ゆるみや偏りがあれば、この時点で修正してください。
非金属チェーンの装着時間は、慣れれば10分から15分程度です。金属チェーンより格段に楽ですが、最初はやはり練習が必要です。
布製チェーンの取り付け方
布製チェーンは、3つのタイプの中で最も簡単に装着できます。基本的にタイヤに被せるだけなので、力も必要ありません。
まず、布製チェーンを袋から取り出し、広げます。表裏を確認してください。多くの製品では、トレッド面(路面に接する側)に特殊な繊維加工が施されており、それが外側になるようになっています。
車を動かさずに、停車した状態でタイヤの上から布製チェーンを被せます。できるだけタイヤの下の方まで広げてください。この時点では、タイヤの下側(地面に接している部分)は覆えていませんが、それで問題ありません。
車をゆっくりと前進または後進させ、タイヤを約半回転させます。これにより、最初は地面に接していた部分が上に来ます。
停車して、残りの部分に布製チェーンを被せます。全体がタイヤを覆うように調整し、ホイール付近のゴムバンドやベルクロでしっかり固定します。
自己センタリング機能: 多くの布製チェーンには「自己センタリング機能」があり、走行すると自動的に正しい位置に収まります。そのため、装着時に多少ズレていても問題ありません。
装着後、ゆっくりと走り出し、数十メートル走行した後に停車して、布製チェーンがずれていないか確認してください。問題なければ、そのまま走行を続けられます。
布製チェーンの装着は、慣れれば5分程度で完了します。ただし、製品によって装着方法が異なるため、必ず説明書を事前に読み、できれば一度練習しておくことをおすすめします。
装着後の注意点
チェーンを装着したら、いくつかの重要な注意点を守る必要があります。
まず、速度制限を守ってください。一般的に、金属チェーンは時速30km以下、非金属チェーンは時速50km以下、布製チェーンも時速50km以下が推奨されています。ただし、製品によって異なるため、説明書で確認してください。高速走行はチェーンの破損やタイヤの損傷につながります。
急発進、急ブレーキ、急ハンドルは避けてください。チェーンを装着していても、雪道や凍結路では車の挙動は不安定です。通常より余裕を持った運転を心がけましょう。
走行中に異音や振動を感じたら、すぐに安全な場所に停車して確認してください。チェーンのゆるみや外れかけ、タイヤへの巻き込みなどが考えられます。無理に走り続けると、タイヤやホイール、さらには車体を傷つける可能性があります。
雪のない乾燥路面に出たら、できるだけ早くチェーンを外してください。特に金属チェーンは、乾燥路面での走行でチェーンが切れやすく、路面も傷つけます。非金属チェーンや布製チェーンも、不必要な磨耗を避けるため、雪道を抜けたら外すのが基本です。
チェーンを外した後は、雪や泥をよく落とし、完全に乾燥させてから保管してください。特に金属チェーンは錆びやすいので、乾燥後に防錆スプレーをかけておくとよいでしょう。保管場所は、高温多湿を避けた涼しい場所が理想です。
チェーン規制について
チェーン規制とは何か

2018年から、日本の道路交通において新しい規制が導入されました。それが「チェーン規制」です。これは、従来の「冬用タイヤ規制」とは異なる、より厳格な規制で、多くのドライバーにとって重要な変更となりました。
チェーン規制とは、大雪特別警報や大雪に対する緊急発表が行われるような異例の降雪があり、通行止めを実施する場合に行われる規制です。この規制が発令されると、冬用タイヤを履いていても、四輪駆動車であっても、タイヤチェーンを着けずに通行することはできません。
重要: つまり、スタッドレスタイヤを装着していても、チェーン規制区間ではタイヤチェーンの装着が必須となるのです。これは多くのドライバーにとって意外な事実かもしれません。スタッドレスタイヤさえ履いていれば冬の雪道は大丈夫と考えている方も多いですが、チェーン規制下ではそれだけでは不十分なのです。
チェーン規制導入の背景
なぜこのような厳しい規制が導入されたのでしょうか。その背景には、近年の異常気象による大規模な立ち往生の発生があります。
2017年から2018年にかけての冬、日本各地で記録的な大雪が発生しました。特に福井県では、国道8号線で最大1500台もの車両が立ち往生し、一部の車は3日間も動けない状態が続きました。新潟県でも同様の事態が発生し、国道17号線で数百台の車両が長時間立ち往生しました。
これらの立ち往生の原因の多くは、スタッドレスタイヤを装着した大型車が急な坂道で動けなくなったことでした。スタッドレスタイヤは通常の積雪路では十分な性能を発揮しますが、記録的な大雪や急勾配では、タイヤが雪に埋まってしまい、グリップ力を失ってしまうのです。一台の車が坂道で動けなくなると、その後ろに次々と車が連なり、あっという間に大規模な渋滞が発生します。
こうした事態を受けて、国土交通省と警察庁は、異例の大雪時には通行止めとする代わりに、チェーンを装着した車両のみ通行を許可することで、立ち往生を防止し、通行止め時間を短縮することを目指しました。これがチェーン規制導入の背景です。
チェーン規制の対象区間
チェーン規制は、全国すべての道路で実施されるわけではありません。現在は、13区間のみチェーン規制対象区間となっています。過去に雪による立ち往生や通行止めが起こった場所の中で、タイヤチェーンを着脱できる場所や通行止めが解除されるまで待機できる場所がある区間で実施します。
高速道路
E8北陸自動車道:丸岡IC~加賀IC(18.2km)
E69東海北陸自動車道:白鳥IC~飛騨清見IC(40.8km)
E1A新名神高速道路:甲賀土山IC~新四日市JCT(53.0km)
E52米子自動車道:湯原IC~江府IC(34.2km)
E56浜田自動車道:大朝IC~旭IC(29.3km)
これらの区間は、いずれも急な上り下りがある峠道や、過去に大規模な立ち往生が発生した場所です。今後も規制区間は順次拡大される予定とのことです。
チェーン規制の発令条件
チェーン規制は、常時発令されているわけではありません。大雪に対する緊急発表や大雪特別警報が出た場合など異例の降雪がある場合に実施する規制です。
具体的には、気象庁が「大雪特別警報」や「大雪に関する緊急発表」を出すような、記録的な大雪が予想される場合に発令されます。通常の降雪ではなく、除雪作業が追いつかないほどの集中的な大雪で、人命に関わるレベルの危険がある状況です。
事前広報: 大雪が予想される2から3日前に通行止め実施の可能性があることを地域住民や道路利用者に国土交通省および警視庁より事前広報を行う予定とされています。そのため、ドライバーは気象情報をチェックし、チェーン規制が発令される可能性がある場合は、事前にチェーンを用意しておく必要があります。
なお、チェーン規制の発令状況は、国土交通省の公式サイト、日本道路交通情報センター、各高速道路会社のウェブサイトやアプリなどで確認できます。冬季に対象区間を通行する予定がある場合は、必ず最新情報を確認してから出発してください。
チェーン規制時のルールと確認
規制発令時は、規制区間手前で検査員による装着確認を実施されます。確認時にタイヤチェーンが未装着だと通行できないため、チェーンを持っていない場合は、それ以上先に進むことができません。
ただし、罰則や違反金はありません。チェーン未装着の場合は単純に通行が認められず、引き返すか、その場でチェーンを装着することになります。チェーン着脱場もあるので、チェーンを持っていればその場で装着して通行することが可能です。
スタッドレスタイヤでも不十分: スタッドレスタイヤを着けていても、タイヤチェーンをしていない自動車はチェーン規制中に通ることはできません。これは非常に重要なポイントです。また、4WD車両は重量が大きいため、下り坂で急ブレーキをかけた時に、止まるまでの距離が長くなることから、チェーン規制中はタイヤチェーンを着けていないと通ることはできません。四輪駆動車だから安心というわけではないのです。
認められるチェーンの種類
チェーン規制で使用できるタイヤチェーンは、自動車用品店などで販売されているものであれば問題ありません。ただし、スプレーのように薬剤を吹き付けるタイプのものでは チェーン規制中に通ることはできません。
具体的には、金属チェーン、非金属(ウレタン・ゴム)チェーン、布製チェーンの3種類が認められています。これらは全て、道路運送車両の保安基準を満たしているため、チェーン規制時に使用できます。
一方、スプレー式のタイヤチェーンは、見た目での判断が難しく、効果も限定的なため、チェーン規制では認められていません。スプレー式を使用している場合でも、チェーン規制区間では通行できないので注意が必要です。
チェーン規制への対応策
チェーン規制に対応するには、以下のような対策が有効です。
まず、冬季に対象区間を通行する可能性がある場合は、必ずタイヤチェーンを車に積んでおきましょう。年に一度しか使わないかもしれませんが、いざという時に持っていないと先に進めなくなります。
出発前に、気象情報と道路情報を必ず確認してください。大雪が予想される場合は、チェーン規制が発令される可能性があります。国土交通省のサイトや日本道路交通情報センター、各高速道路会社の情報をチェックしましょう。
可能であれば、大雪が予想される日は対象区間の通行を避けることも検討してください。別ルートを使う、日程を変更するなど、柔軟な対応が安全につながります。
もし走行中にチェーン規制が発令されたら、慌てずに指示に従ってください。チェーンを持っていれば、着脱場で装着して通行できます。持っていない場合は、引き返すか、規制が解除されるまで待機することになります。
チェーン規制は、異例の大雪時に私たちの安全を守るための措置です。不便に感じることもあるかもしれませんが、大規模な立ち往生を防ぎ、多くの人々の命と時間を守るために必要な規制なのです。
おわりに
タイヤチェーンは、1904年の誕生から120年以上の歴史を持つ、冬の道路交通に欠かせないアイテムです。金属製チェーンから始まり、非金属製、そして布製へと進化してきたその歴史は、「より使いやすく、より快適に」というドライバーのニーズに応える技術革新の歴史でもありました。
現代では、用途や予算、車種に応じて様々なタイプのチェーンから選べるようになりました。豪雪地帯で頻繁に使う方には金属製、定期的に雪道を走り快適性も重視したい方には非金属製、都市部で緊急時の備えとして持っておきたい方には布製と、それぞれに適した選択肢があります。
2018年から導入されたチェーン規制は、スタッドレスタイヤを装着していてもチェーンが必要になる場合があるという、多くのドライバーにとって新しいルールです。これは近年の異常気象による大規模な立ち往生を防ぐための措置であり、私たちの安全を守るために重要な規制です。
タイヤチェーンの選択、取り付け、そしてチェーン規制への対応。これらすべてにおいて大切なのは、事前の準備です。実際に雪が降ってから慌てるのではなく、晴れた日にチェーンの装着を練習し、自分の車に合ったチェーンを用意しておく。そして、冬季に遠出する際は気象情報と道路情報を確認する。こうした準備が、安全で快適な冬のドライブにつながります。
雪道での運転は、どんなに準備をしても予測できないことが起こりえます。しかし、正しい知識と適切な装備があれば、リスクは大きく減らせます。この記事が、あなたの安全な冬のドライブの一助となれば幸いです。
どうぞ安全運転で、素敵な冬をお過ごしください。