ディーゼルオイルはどれでも同じじゃない!DL-1とDH-2の違いを解説
ハイエースのオイル交換しようと思い、トラック用DH-2って書いてあるディーゼルオイルが余っているけど、入れて大丈夫なのか、間違えたら壊れるのかと不安になったりしませんか?
「ディーゼル車のオイルを交換しようとしたら、種類があってどれを選べばいいか分からなかった」という声を、整備の現場でよくお客様から聞かれます。ガソリン車のエンジンオイルでさえ粘度やグレードの違いで迷うことがありますが、ディーゼル車となるとさらに「DL-1」や「DH-2」といった規格名が並び、戸惑う方が多いです。
結論から言うと、ディーゼルオイルの規格を間違えることは、エンジンオイル不足と同じくらい車にとってダメージになりかねます。特に現代のディーゼル車に搭載されたDPF(ディーゼル微粒子フィルター)は、オイルの種類に非常に敏感で、規格外のオイルを入れ続けると詰まりが起きやすくなりトラブルにつながり数十万円の出費もありえます。
この記事では、なぜディーゼルオイルに規格が存在するのか、そしてとくに混同されやすい「DL-1」と「DH-2」の違いを、歴史から分かりやすく解説します。車の知識がない方でも理解できるよう説明しますので、ぜひ最後までお読みください。
この記事で分かること
- ディーゼルオイルに規格が生まれた背景と歴史
- 代表的な規格「CF」「DH-1」「DL-1」「DH-2」の意味と違い
- DL-1とDH-2を使う車の違い、間違えてはいけない理由
- 誤ったオイルを使った場合に起こりうる具体的なトラブル
- 自分の車に合ったオイル規格を確認する方法
ディーゼルオイルの進化

昔のディーゼル車はシンプルだった
かつてのディーゼルエンジンは構造がシンプルで、エンジンオイルに求められる性能もそれほど複雑ではありませんでした。燃料を高圧で噴射して圧縮着火するという基本原理は現在と変わりませんが、1990年代以前のディーゼル車はエンジン内部の燃焼の後に排ガスを処理する機能があまりなく、排ガスはそのままマフラーから排出されていました。昔のディーゼル車といえば、黒い煙をだして走っているというイメージがあるのではないでしょうか?
当時のオイルは、エンジン内部の摩耗を防ぎ、熱を逃がし、汚れを分散させるという基本的な機能があれば十分でした。規格の種類も今ほど多くなく、整備士にとっても選択の迷いがなくオイルは一種類しかないでした。
排ガス規制の強化がオイルを変えた
状況が変わり始めたのは、1990年代から2000年代にかけてのことです。大気汚染問題が深刻化するなかで、各国で排ガス規制が段階的に強化されました。日本でも国土交通省や環境省による新長期規制・ポスト新長期規制が施行され、ディーゼルエンジンの排気に含まれる粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)を大幅に削減することが義務づけられました。大気汚染や、環境問題、健康被害に対応するためです。
この規制への対応として、メーカーは噴射圧力の高圧化や燃焼制御の精密化など、エンジン設計を根本から見直しました。それに伴い、高温・高圧環境に耐えられる性能と、排ガス後処理装置に悪影響を与えないオイルへのニーズが急速に高まっていきました。
DPF搭載車の登場で状況が一変した
2000年代に入ると、DPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼル微粒子フィルター)を搭載したディーゼル車が普及し始めます。DPFはエンジンから排出されるすすや微粒子を触媒のような機構でに捕集し、定期的に高温燃焼(再生)で焼き切ることで浄化する仕組みです。この装置の登場によって、ディーゼル車の排ガスはほぼ黒煙が出なくクリーンになりましたが、同時に新たな問題が生まれました。
エンジンオイルに含まれる添加剤の一部、特にリン・硫黄・金属分(これをまとめて灰分と呼びます)がDPFに堆積し、フィルターの目詰まりを引き起こすことが分かってきたのです。エンジン保護の観点から有効だった添加剤成分が、DPFの寿命を縮めるという、大変深刻な問題でした。
こうした背景から、DPF搭載車に対応した低灰分オイルの規格が実装されることになりました。それが後述する「DL-1」や「DH-2」です。エンジンオイルはもはやエンジン単体を守るだけでなく、排気システム全体の性能を維持するために作られるものになったのです。
ディーゼルオイルの規格とは

ディーゼルオイルの規格には国際的なものと日本独自のものがあります。以下では、日本のディーゼル車に関わりの規格を中心に解説します。
CF規格:DPF以前の基準
CFはAPIが定めた規格で、1994年に導入されました(CF=Commercial ForwardのC+Forwardを意味するFの組み合わせです)。間接噴射式エンジンや高負荷ディーゼルエンジンを想定した規格で、DPFが存在しない時代のディーゼル車に広く使われていました。エンジン保護性能は一定水準を満たしていますが、灰分量の制限がなく、現代のDPF搭載車への使用はしないでください。
現在でも旧型トラックや産業用機械など、後処理装置を持たないディーゼルエンジンに使用されることはありますが、乗用車への使用は現在の車種ではほぼ対象外と考えてください。
DH-1規格:日本のトラック向けDPF対応第一世代
DH-1はJASO(日本自動車技術会)が制定した日本独自の規格です。2002年に登場し、主に大型・中型トラックやバスを対象としています。DPF搭載エンジンへの対応を意識した設計で、CFに比べて清浄性や酸化安定性が向上しています。ただし、灰分量の制限はDH-2に比べると緩めで、後に制定されるDH-2やDL-1ほどの低灰分化には対応していません。
DH-1は現在も一部の古いトラック向けオイルに使われていますが、新規制対応エンジンにはDH-2が必須になります。
サルフェートアッシュ(硫酸灰分)とは
DL-1とDH-2を説明する上で欠かせないのが「サルフェートアッシュ(Sulfated Ash)」です。これはエンジンオイルを燃焼させたときに残る灰分のことで、オイルに添加されているカルシウム・マグネシウム・亜鉛などの金属系添加剤が燃えた後にできます。
この灰分は燃焼してもなくなりません。エンジン内でオイルが少量ずつ燃焼するたびに、灰分がDPF(ディーゼル微粒子フィルター)の内部に蓄積し続けます。すすや未燃燃料はDPFの再生(高温燃焼)で焼き切れますが、金属由来の灰分は焼いても残るため、長期間使用するとフィルターが詰まる原因になります。サルフェートアッシュの量はオイルの重量に対する割合(%)で表され、この数値が低いほどDPFへの負担が少ないとされます。
DL-1規格:乗用車向けDPF対応の標準
DL-1もJASO規格のひとつで、2007年に制定されました。「D」はディーゼル、「L」は乗用車(Light-duty)、「1」はグレードを示します。主にディーゼル乗用車、つまり排気量が小さめで日常使いを想定した車種を対象としています。
DL-1の最大の特徴は、サルフェートアッシュが1.0%以下に抑えられていることです。これにより、DPFへの金属分の堆積を最小限にとどめ、フィルターの詰まりを防ぎます。また、燃費性能を重視した設計になっており、低粘度オイル(5W-30など)が多いのも特徴です。国産ディーゼル乗用車では、マツダのSKYACTIV-D搭載車やトヨタのハイエースなどのディーゼル乗用車など、取扱説明書でDL-1を指定しているモデルが多く見られます。
DH-2規格:大型商用車向けDPF対応の現行標準
DH-2はJASO規格で2013年に制定されました。「D」はディーゼル、「H」は重量車(Heavy-duty)を意味し、大型トラックやバスなどの商用車が主な対象です。DH-1の後継規格として位置づけられており、より高い清浄性と酸化安定性を備えています。
灰分量はDL-1より若干多い設定(1.0%超の製品も存在します)ですが、これは重量車エンジンがより高い負荷で長期間運転されるため、エンジン保護に有利な添加剤をある程度確保する必要があるためです。燃費性能よりも耐久性・耐摩耗性を重視した設計になっています。現行の国産大型トラックでDPF搭載モデルには、ほぼDH-2が指定されています。
| 年代 | 主な出来事 | 関連する規格 |
|---|---|---|
| 1994年 | API「CF」規格制定。間接噴射式ディーゼルに対応 | CF |
| 2000年代初頭 | 日本の排ガス規制(新長期規制)が強化。DPF搭載車が登場し始める | — |
| 2002年 | JASO「DH-1」制定。国産大型商用車向けDPF対応規格の第一世代 | DH-1 |
| 2007年 | JASO「DL-1」制定。ディーゼル乗用車のDPF保護を重視した低灰分規格 | DL-1 |
| 2009年以降 | マツダSKYACTIV-Dなどクリーンディーゼル乗用車が本格普及 | DL-1が主流に |
| 2013年 | JASO「DH-2」制定。商用車向け規格がDH-1から更新される | DH-2 |
| 現在 | 乗用車はDL-1、商用重量車はDH-2が国内ディーゼルオイルの主流規格 |
DL-1 / DH-2 |
DL-1とDH-2の違い

DL-1とDH-2はどちらもDPF対応のディーゼルオイル規格ですが、設計が根本的に異なります。「どちらも対応しているなら同じでは?」と思う方もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。以下の比較表を見てください。
| 比較項目 | DL-1 | DH-2 |
|---|---|---|
| 主な対象車種 | ディーゼル乗用車 | 大型トラック・バスなどの商用車 |
| DPF対応 | 対応 | 対応 |
| サルフェートアッシュ(灰分量) | 1.0%以下(低灰分) | やや多い(製品により異なる) |
| 設計上の重視点 | 燃費・低灰分によるDPF保護 | 耐久性・耐摩耗性 |
| 粘度グレードの傾向 | 低粘度(5W-30など)が多い | 高粘度(10W-30、15W-40など)が多い |
| オイル交換サイクルの想定 | 乗用車の走行サイクル | 長距離・高負荷の商用車サイクル |
| 主な規格制定年 | 2007年(JASO) | 2013年(JASO) |
両者の最大の違いは、灰分量の設定と設計の優先順位にあります。DL-1は乗用車の小排気量・小容量DPFを守るために灰分を徹底的に抑えています。一方、DH-2は大型エンジンが長時間高負荷で稼働し続ける環境を想定し、エンジン保護に必要な添加剤を多めに配合しています。
また、粘度グレードも異なります。DL-1では燃費向上を目的とした5W-30などの低粘度グレードが一般的ですが、DH-2では重量車の高い負荷に耐えるために10W-30や15W-40などの高粘度グレードが多くなっています。乗用車エンジンに高粘度オイルを入れると、設計上の摩擦損失が増え、燃費が悪くなることがあります。。
間違えるとどうなる?

「規格が違っても、オイルはオイルでしょう」と思う方もいるかもしれません。しかし現代のDPF搭載ディーゼル車においては、オイルの規格を間違えることはトラブルを起こすの引き金になります。間違えるとどうなってしまうのか説明します。
DPFの詰まり
乗用車(DL-1指定)にDH-2を入れ続けた場合に起きやすいのが、DPFの目詰まりです。DH-2は灰分量がDL-1より多いため、燃焼によってDPFに金属分が蓄積される量もペースも速くなります。DPFは走行中に自動的に高温再生(すすの焼却)を行いますが、金属分(灰分)は焼いても消えません。堆積が増えるとフィルターが詰まり、エンジン警告灯が点灯したり、出力が低下したりします。最終的にはDPFの交換が必要になりますが、これは非常に高額な修理になります。一般的にDPFの交換費用は車種にもよりますが、部品代だけで数万円から十数万円になることがあります。
燃費の悪化
乗用車にDH-2の高粘度グレードオイルを使用した場合は現代のディーゼル乗用車は燃費を良くするために低粘度オイルが使用されており、仕様外の粘度のオイルを使うと燃費が悪化する可能性があります。1回の使用で劇的に変わるわけではありませんが、長期的に使い続けると燃費が悪くなります。
排気系のトラブルと警告灯の点灯
DPFにはいろんなセンサーが付いています。DPFの詰まりが進行すると、センサーが異常を検知してエンジン制御ユニット(ECU)が警告灯を点灯させます。この状態で走行を続けると、DPFの強制再生が繰り返し実行されてエンジンオイルが希釈されたり、排気系に熱的な負担がかかったりします。最終的にはDPFの強制再生でも解消できなくなり、ディーラーまたは整備工場での対応が必要になります。
自分の車のオイルを確認する方法

自分の車に必要なオイル規格を確認するのは、簡単です。以下の2つの方法で確認できます。
取扱説明書を確認する
最も確実な方法です。車の取扱説明書には「エンジンオイルの品質規格」として推奨規格が明記されています。多くの場合、「エンジン」や「維持・点検」に関するページにまとめられています。マツダのクリーンディーゼル車であれば「JASO DL-1」と記載されていることが多く、国産大型トラックでは「JASO DH-2」と記載されているはずです。取扱説明書が手元にない場合は、メーカーの公式ウェブサイトでも確認できます。
オイルフィラーキャップ(オイルキャップ)を確認する
エンジンルームのオイルを注ぐ口(フィラーキャップ)の周辺や、キャップ自体に推奨規格や粘度が刻印・印字されている場合があります。乗用車では「5W-30 DL-1」などの表記が見られることがあります。ただし、すべての車種に表示があるわけではないため、あくまで確認として使ってください。
Q&A
まとめ
ディーゼルオイルの規格は、排ガス規制の強化とDPF搭載車の普及を背景に段階的に整備されてきました。そのなかでも今回取り上げたDL-1とDH-2は、どちらもDPF対応でありながら、設計がまったく異なります。DL-1は乗用車の小さなDPFを守るために灰分量を厳しく抑えた規格であり、DH-2は大型商用車の高負荷環境に耐える耐久性を重視した規格です。「DPF対応」という共通点だけで同じものだと思って使い回すことは、どちらの車種にとってもリスクになります。
特に乗用車のオーナーの方に気をつけていただきたいのは、DH-2を乗用車に使い続けた場合のDPF詰まりです。DPFは一度詰まると再生だけでは対処できなくなり、交換となれば高額な修理費用がかかります。日常のオイル交換で数百円を節約しようとした結果、数万円から十数万円の出費につながることがあります。オイルの規格は必ず取扱説明書で確認し、指定された規格のオイルを使うことが、車を長く安く乗り続けるための一番簡単な方法です。
迷ったときや分からないときはディーラーや整備工場に相談してください。車のメーカーと型式を伝えるだけで、すぐに適切なディーゼルオイルを教えてもらえます。整備士として現場で多くのオイルトラブルを見てきた経験から言うと、正しいオイル選びほどコストパフォーマンスの高いメンテナンスはありません。この記事が、皆さんの知識になれば幸いです。
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