車が水没したら保険は使える?修理費100万円超もある水害リスクを解説
「まさか自分の車が水に浸かるとは思っていなかった」豪雨や台風のあと、整備工場にそう言って運び込まれる車が毎年必ずあります。そして、その多くのオーナーが同じことを口にします。「車両保険に入ってなかった」と相談されます。
水没した車というのは、見た目以上にダメージが深刻です。エンジンのシリンダー内に水が入った状態でセルモーターを回してしまうと、コンロッドが曲がる「ウォーターハンマー」という現象が起き、エンジンが一発でおしゃかになります。電気系統も、接触不良やショートを起こし、水が乾いたあとに腐食が進んで半年後に突然不調になることもよくあります。修理費は数十万円から、場合によっては車両価格を超えることもある。それが水没事故の怖いところです。
この記事では、「車両保険に入っていれば水没は補償されるのか」「一般型とエコノミー型でどう違うのか」「そもそも車両保険は本当に必要なのか」といった疑問を、現場で長年車と向き合ってきた整備士の視点からできるだけ分かりやすくお伝えします。保険の見直しを検討されている方の参考になれば幸いです。
- 車の水没・水害が自動車保険で補償される条件と仕組み
- 車両保険の「一般型」と「エコノミー型」の具体的な違い
- 水没車の修理費の目安と廃車にした場合の保険金の扱い
- 「車両保険は必要ない」と思っていた人が見直すべきポイント
- 台風・豪雨シーズン前に確認しておきたい保険の注意点
車の水没は自動車保険で補償されるのか

結論から言うと、車が水没した場合に補償を受けられるかどうかは、加入している保険の種類によって大きく異なります。自動車保険には大きく分けて「対人・対物賠償」などの賠償系の補償と、自分の車の損害をカバーする「車両保険」があります。水没による車の損害は、車両保険に加入していなければ原則として補償されません。なので車両保険の加入をおすすめします!
自賠責保険は相手への賠償に特化した保険ですので、自分の車が台風の大雨で浸水しても、自賠責から保険金は出ません。また、任意保険に加入していても、車両保険をオプションとして付けていない場合は同じです。「任意保険に入っているから安心」と思っていた方が、水害後に「車両保険がないと車の損害は出ない」と知って愕然としていることは、整備現場でもよく目にします。
水害は「自然災害」として扱われる
車両保険が適用されるかどうかは、損害の原因がどのように分類されるかによっても変わってきます。台風や集中豪雨による浸水は「自然災害」に分類されます。多くの保険会社では、一般型・エコノミー型のどちらでも台風や洪水による自然の水没は補償対象となっています。ただし、契約内容や保険会社によって細かいの扱いが異なるため、ご自身の契約を確認しておくことが重要です。
車両保険の「一般型」と「エコノミー型」の違い
車両保険には主に「一般型(一般条件)」と「エコノミー型(車対車+限定危険担保特約)」の2種類があります。保険会社によって呼び方が多少違いますが、大体は一緒です。この2つの違いを理解することで、水害時に補償がされるかが分かります。
まず初めに知ってもらいたいのが、台風・洪水・高潮による水没については、多くの保険会社でエコノミー型(車対車+A)でも補償対象となっています。SBI損保、東京海上ダイレクト、価格.comの調査でも「一般型・エコノミー型どちらでも水災は補償される」とされています。ただし、保険会社や契約内容によって細かいの扱いは異なるため、ご自身の契約内容を必ず確認してください。
| 補償内容 | 一般型 | エコノミー型 |
|---|---|---|
| 台風・洪水・高潮による水没 | 補償される | 多くの場合、補償される※ |
| 相手がいる事故(もらい事故含む) | 補償される | 補償される |
| 自分が原因の単独事故・自損事故 | 補償される | 補償されない |
| 盗難 | 補償される | 多くの場合、補償される※ |
| 火災・爆発 | 補償される | 多くの場合、補償される※ |
| 飛び石・落下物による損傷 | 補償される | 多くの場合、補償される※ |
| 当て逃げ(相手方不明の事故) | 補償される | 補償されない(保険会社によって異なる) |
| 保険料の目安 | 高め | 一般型より安め |
※エコノミー型の「多くの場合、補償される」項目は、保険会社・契約内容によって異なります。加入している保険の約款や保険証券で必ず確認してください。
表を見ていただくと、エコノミー型で明確に補償対象外となるのは「自損事故(単独事故)」と「当て逃げ(相手方不明の事故)」です。台風や洪水による水没は、多くの保険会社でエコノミー型でも補償されますが、「走行中に自ら冠水した道路へ進入して水没した」ような場合は、自損事故として扱われ補償されないこともありますので注意が必要です。一方、駐車中に台風や洪水で被害を受けた場合は、エコノミー型でも補償対象となることが一般的です。
水没車の修理費はどのくらいかかるか

水没した車の修理費は、浸水の深さと時間によって大きく変わります。整備士の経験から言うと、「タイヤの半分くらいまでの浸水で短時間だった」という場合と、「ドアの下まで水没して一晩そのままだった」という場合では、修理費用がまったく違います。
浸水レベル別の修理費の目安
あくまで目安であり、車種や状態によって大きく異なりますが、現場での経験をもとにお伝えします。フロアマットや内装の下が湿った程度(浸水がごく浅い)であれば、乾燥・清掃・消臭処理で数万円程度で済む場合もあります。しかし、シートの下まで浸水した場合はシートやカーペットの交換、電気系統の確認が必要になり、20万円以上になることが多いです。
さらにエンジンルームまで水が入ったケース、あるいはエンジンが水を吸い込んでしまった場合は、エンジンのオーバーホールや載せ替えが必要になります。この段階になると修理費が100万円を超えることも珍しくありません。車両価格は古い車であれば修理費が車の価値を上回ってしまう「全損」と判断され、ほぼ廃車になります。
数年前の台風の翌朝、河川沿いのコインパーキングに停めていたミニバン(ハイブリッド車)が床上浸水した状態で持ち込まれました。オーナーの方は前日から県外に出張中で、戻ってきたら車が水に浸かっていたという状況です。
診断の結果、エンジン本体やミッション、ハイブリッドモーターのダメージに加え、ハイブリッドバッテリーの損傷、フロア下に設置されたECU(電子制御ユニット)やハーネス類の水没による故障が判明しました。内装も全交換レベルの損傷です。修理見積もりは180万円を超え、車両の時価額を大きく上回りました。
結果として全損の判定となり、廃車・買い替えの選択をされました。残念だったのは、その方が「古い車だから」という理由で車両保険を外していたことです。台風シーズン前に「1年だけでも付けておこうか」と迷っていたとおっしゃっていたのが、今でも印象に残っています。
「全損」と判断された場合はどうなるか
修理費が車両保険の保険金額(時価額)を超えると判断された場合、保険会社は「全損」として車両保険の上限額を支払い、修理ではなく買い替えを前提とした処理を行います。この場合、車は廃車となり、保険金は「全損保険金」として支払われます。保険金の額は、その車の「時価額」をもとに計算されるため、年式が古い車ほど受け取れる金額(掛け金は安くなっている)は少なくなります。
水没で廃車になった場合の保険金はどうなる

車が水没して修理不能、あるいは修理費が車両価格を超えた場合、保険会社は「全損」と判断します。この場合、車両保険から支払われる保険金は、車の時価額(協定保険価額)が上限となります。
時価額とは、事故直前のその車の市場価値のことです。新車価格から年数によって車両価値が下がきて、年式が古くなるほど低くなります。たとえば購入から8年経った車であれば、修理費が高額でも保険金は数十万円程度にとどまる場合があります。廃車費用については、保険会社や契約内容によって扱いが異なるため、契約書や担当者に確認することが必要です。
廃車費用・撤去費用はどう扱われるか
水害で廃車になった場合、レッカー代や廃車にかかる手続き費用が発生します。レッカー費用については、ロードサービスが付帯している保険であれば一定範囲でカバーされる場合があります。ただし廃車手続き費用そのものは、通常の車両保険の範囲外となることが多いため、事前に契約内容を確認しておくことをおすすめします。
台風・豪雨での水没で保険を使うときの注意点

実際に車が水没した場合、保険を使うにあたっていくつか注意しておきたいことがあります。現場でよく見聞きするトラブルや見落としをまとめておきます。
保険会社への連絡はできるだけ早く
水害が発生したら、車を動かす前に保険会社に連絡することが最優先です。無理にエンジンをかけようとすると、先ほど触れたウォーターハンマーが起きる可能性がありますし、保険会社の指示なく修理を始めると、損害の状態が確認できなくなって保険金支払いに支障が出ることがあります。
被害状況の写真記録を残す
浸水した状態の写真は、できれば動かす前に複数枚撮影しておくことを強くすすめます。浸水の深さが分かるような写真(ドアの内側、シート、フロアカーペット、エンジンルームなど)があると、保険会社の査定がスムーズに進みます。また、駐車場の状況(道路の冠水状況など)も撮影しておくと、自然災害であることの証拠になります。
免責金額(自己負担額)の確認
車両保険を使う場合、多くの契約では「免責金額」が設定されています。たとえば免責金額が5万円の契約であれば、修理費が30万円かかっても保険から出るのは25万円です。契約時に設定した免責金額を確認しておきましょう。免責金額を高く設定しているほど保険料は安くなりますが、実際に使う場面での自己負担が増えます。
等級への影響を忘れずに
車両保険を使うと、翌年の等級が下がります。一般的に、車両保険を1回使うと3等級ダウンとなり、保険料が上がります。修理費が少額で済む場合は、保険を使わずに自費で修理したほうがいい場合もあります。保険会社に問い合わせる際に、等級変動について試算してもらってどっちがいいのかを相談しててはいかかでしょうか。
「車両保険は必要ない」は本当?

「うちの車はもう古いから車両保険はいらない」「事故を起こさなければ使わないんだから無駄」こうした考え方で車両保険を外している方もいます。実際、車両保険は保険料の中でもかなりの比重を占めるため、節約のために外す理由もわかります。ただ、その判断が本当に大丈夫かどうか確認してみましょう。
住んでいる地域と駐車環境を見直す
車両保険の必要性を考えるうえで、住んでいる地域の地形や過去の浸水履歴の確認は重要になります。最近話題のハザードマップで自宅や勤務先周辺の浸水リスクを確認してみてください。河川の近く、低地、アンダーパスの近くに駐車することが多い方は、水害の危険性があります。また、青空駐車場(屋根なし)の場合は、雹(ひょう)や飛来物による車体へ傷も考えておきましょう。
国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」では、自宅や駐車場の住所を入力するだけで、洪水・高潮・内水氾濫による浸水想定区域と想定水深を地図上で確認できます。スマートフォンにも対応しており、無料で利用できます。
「うちは大丈夫だろう」と思っていた方が、確認してみると浸水想定区域(最大規模想定で0.5〜3m)に入っていた、ということは珍しくありません。都市部でも、暗渠化した河川の上や低地に位置する駐車場は意外と浸水リスクが高い場合があります。
「必要ない」から「見直す」へのきっかけ
豪雨のたびにSNSや報道で水没車の映像が流れます。そのたびに「自分は大丈夫だろうか」と感じた方は、ぜひ今の保険内容を見直すタイミングです。保険の見直しは面倒に感じるかもしれませんが、一括比較サービスを使えば複数社の見積もりを一度に取ることができ、現在の保険料や補償内容と比べることが簡単にできます。車屋さんや知り合いの保険屋さんに任せっきりにして、本当に必要な保険の種類に入ってなかったり、逆に余計な種類に入って、無駄な掛け金を払っている場合が意外と多いです。是非、見直ししてみてください。
自動車保険を見直すときポイント

車両保険の見直しを検討する場合、以下の点を整理してから比較することをおすすめします。
車の市場価格と保険料のバランスを確認する
車両保険の保険金は車の市場価格が上限です。車の価値が低くなると、払い込む保険料に対して受け取れる保険金も少なくなります。一般的に、車の時価額が50万円を切ってくると、車両保険の一般型を付けるのと払う保険金の比率が悪くなります。ただしこれは目安であり、水害の危険がある方や車を良く乗る方によって加入するかは変わってきますが加入したほうが安心材料にはなりますし、もしも、事故や水害で廃車になったとしても頭金ぐらいの払い戻しはあります。
一般型とエコノミー型の保険料の差額を比較する
一般型とエコノミー型では保険料に差があります。しかし、安さだけで選ぶと、万が一の災害時に大きな自己負担が発生する可能性もあります。
年間で節約できる保険料はいくらなのか。
そして、補償されなかった場合に支払う金額はいくらなのか。
この2つを比較することが、後悔しない保険選びのポイントです
特約・ロードサービスの内容を確認する
水害時にはレッカーが必要になります。ロードサービスの有無や、レッカー搬送の距離・回数の上限を確認しておくことが重要です。また、代車費用特約が付いていれば、修理中に代車を借りることができます。
更新時期だけでなく途中解約・変更も可能
自動車保険は更新時期でなくても、途中で契約内容を変更したり、乗り換えたりすることが可能です。豪雨シーズンの前に見直しを行うことは十分に意味があります。ただし、途中解約の場合は解約返戻金の計算方法が会社によって異なるため、現在の保険会社に確認してから動きましょう。
Q&A よくある質問
まとめ
車の水没・水害は、車両保険(一般型・エコノミー型のいずれも)に加入していれば、多くの保険会社で補償対象になります。ただし、冠水した道路へ自ら進入した場合など「自損事故」と判断されるケースではエコノミー型では補償されないことがあります。また、保険会社や契約内容によって詳しいところが異なるため、ご自身の契約を必ず確認することが大切です。
一般型とエコノミー型の本質的な違いは「自損事故(電柱への衝突など)」や「当て逃げ」を補償するかどうかです。水害だけを考えるなら両者の差は小さいですが、日常の運転リスク全体で考えると、一般型の安心感は大きいと言えます。毎日車を使う方は、事故に遭遇する確率も高くなりますので、一般型をおすすめします。
水没車の修理費は浸水の深さによって大きく異なり、軽症でも数十万円、エンジンへのダメージがあれば100万円を超えることもあります。修理費が車の市場価値を上回れば全損となり、廃車といことになります。
「車両保険は必要ない」と判断していた方も、住んでいる地域のハザードマップや駐車環境、車の使用状況を改めて確認することで、見直しのきっかけになるかもしれません。一括見積もりサービスを使えば、一般型とエコノミー型の保険料の差額も簡単に比較できます。
台風・豪雨シーズンを前に、今一度ご自身の保険内容をご確認ください。
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