納車したばかりの中古車で、タイヤの内側がすり減り、ワイヤーが出ていた。タイヤは唯一地面と接地している部品で事故に直接かかわる部品です。減っていたりすれば不安になります。
2026年10月に起きたバディカのタイヤ問題は、一つの会社の出来事というより、中古車を売るすべての会社にとって他人事ではない出来事なはずです。
この記事では、販売会社が納車前にどこを確認し、問題が起きたときにどう動けばよいのかを、整備士の目線で整理します。
※この記事は公開情報をもとに作成しています。2026年10月15日時点で、原因は公式には公表されていません。バディカの点検に落ち度があったと断定するものではなく、一般的な整備の考え方にもとづく提案です。
目次
- バディカのタイヤ問題を時系列で整理(2026年10月15日時点)
- 「点検した」と「安全」は別のもの
- 販売会社がやるべきこと
- バディカの対応から学べること、これから問われること
- 今日から見直せる、納車前チェックの最小セット
- まとめ
- 参考情報
バディカのタイヤ問題を整理
まず、これまでの経緯を、わかっている範囲で順番に整理します。当事者の発信、報道、会社の発表を整理していきます。
対象の車について
問題の車は、2024年式の三菱デリカミニで、走行距離は約4万kmと報じられています。販売前に公開された車両状態鑑定書には、評価点4.5点、タイヤは「交換不要 2023年製」と書かれていたとされています。
2026年10月10日:購入者が納車直後のタイヤについて投稿
バディカで車を買った沖田政幸氏が、納車されたばかりの車のタイヤからワイヤーが出ていたとXに投稿しました。
添付された写真には、タイヤの内側が大きくすり減り、内部のワイヤーが見えている様子が写っていました。納車直後にこの写真は衝撃的でした。投稿では、納車直後にタイヤ交換が必要になったことや、今後安心して乗れるのかという不安が書かれていました。
この投稿をきっかけに、納車前の点検や中古車店の品質管理について、SNSで大きな議論が起きました。
2026年10月11日:中野優作代表が謝罪し、調査方針を発表
翌11日、バディカの中野優作代表が、Xで「納車車両のタイヤに関するご報告」を公開しました。
代表は、購入者とその妻に不安を与えたことを謝罪し、代車の提供と第三者による車両点検を進めると説明しました。また、この車は納車前に第三者機関の鑑定を受け、提携工場での整備・点検も行い、運輸支局などでの車検にも合格していたいうことでした。それにもかかわらず、納車から間もなく、著しい偏摩耗とワイヤーの露出が確認されたという説明でした。
原因については、納車前の各工程の記録を見直すとしました。そのうえで、車両側の異常は三菱自動車に、タイヤ自体の不具合はタイヤメーカーに確認する予定です。自社の点検や確認に問題がなかったかも含め、あらゆる可能性を排除せず、客観的な事実にもとづいて調べると述べています。最終的な責任は代表取締役である自分が持つ、とも書かれていました。
あわせて、前日に全店の営業スタッフを集めて緊急ミーティングを行い、販売予定のすべての車両に同様の状態がないか確認したことも説明しています。また、該当店舗は、新規販売業務を自主的に一時停止しました。この停止は会社の判断で行われたもので、行政による営業停止処分ではありません。
2026年10月12日:車両状態鑑定書の記載に注目が集まる
12日には、購入者が、販売前に公開されていた車両状態鑑定書についても投稿しました。タイヤに「交換不要」と書かれていたことがわかり、鑑定や点検の中身に注目が集まりました。
ただし、鑑定書の記載だけでは、点検の時点でタイヤがどんな状態だったのかまではわかりません。点検のときと納車のときで状態がどう違ったのか、各工程でどこまで確認したのかは、調査を待つ必要があります。
2026年10月13日:代表らが購入者を訪問して直接謝罪
13日、中野優作代表、中野大助副社長、担当エリアマネージャーの3人が広島を訪れ、購入者に直接謝罪しました。謝罪の内容は、タイヤの件に加えて、希望ナンバーの件も含まれていました。
この場では、現時点での調査結果の報告もあったと、購入者は説明しています。ただし、その具体的な中身は公表されていません。当該の車は、同日中に代車との入れ替えが完了し、今後の保証や対応についても、誠意をもって丁寧に対応するという説明があったそうです。
2026年10月14日:購入者が「ご報告とお詫び」を投稿し、騒動は一旦落ち着く
翌14日、購入者の沖田氏が、前日の訪問についてXで「ご報告とお詫び」を投稿しました。ここまでの一連の投稿で、多くの人に心配や迷惑をかけたことをわびたうえで、次のような内容を伝えています。
まず、バディカ社が納車当日からの保証や諸問題に真摯に対応していること。自身の弁護士にも相談したところ、現状では弁護士が介入する必要はないという回答だったこと。後日、バディカ社から公式なリリースがあると認識していること。そして、そのリリースの内容に大きな食い違いがない限り、この件についての自分からの発信は今後控える予定であることです。
購入者は、発信について口止めや制限は一切ないとも明記しています。そのうえで、現在は会社と誠実に話し合えているとして、当事者双方への行き過ぎた投稿は控え、温かく静観してほしいと呼びかけました。
この報告により、購入者と会社の間では、話し合いが落ち着いた状態に入ったといえます。SNS上の議論も、いったん収束に向かいました。
2026年10月14日:複数のメディアが報道
同じ14日には、MSRwebやユーチュラ、cokiなどが、この問題を取り上げました。報道では、納車直後にワイヤーの露出が見つかった経緯、鑑定書の記載、会社の謝罪と調査方針、代表らの直接訪問などが紹介されています。会社側の素早い動きが伝えられる一方で、納車前の管理体制に対して厳しい見方も出ています。
2026年10月15日時点:購入者との対応は一旦落ち着いたが、原因は公表されていない
購入者と会社の間では、謝罪、代車への入れ替え、保証の説明が済み、話し合いが落ち着いた状態にあります。購入者の発信も、会社の公式リリースの内容に大きな食い違いがない限り、控えられる予定です。
ただし、騒動が一旦収まったことと、問題が解決したことは別です。確認できた範囲では、なぜ納車前の点検で見つからなかったのか、点検の時点で異常があったのか、その後に進んだのかを示す最終的な報告は、まだ出ていません。後日、会社から公式リリースが出る予定と伝えられています。
今後は、会社がどこまで具体的に調査結果と再発防止策を示すかが注目されます。
「点検した」と「安全」は別のもの
今回の問題でいちばん重く受け止めたいのは、鑑定、整備、車検と、複数の工程を通っていたとされる車で起きたという点です。
鑑定は、車の状態を評価して点数や記載にするものです。車検は、検査を受けた時点で、決められた基準に合っているかを見るものです。整備は、実際に手を入れる作業です。それぞれ目的が違うため、どれか一つを通ったからといって、納車の際に安全に乗れるとは限りません。
また、タイヤの内側は、見ようとしなければ見えません。外側と中央の溝が大丈夫でも、内側だけが大きく減っていることがあります。「確認した」という記録があっても、どこまで点検したかはわかりません。
だからこそ販売会社には、外部の鑑定や整備を信頼しつつも、最後にお客様へ車を渡す立場として、自社で安全を確かめる仕組み必要なのではないでしょうか。

販売会社がやるべきこと
1.タイヤの確認方法を、全店で同じにする
まず、タイヤの確認のやり方を会社として決めておきます。担当者の経験や、その日の忙しさで確認の深さが変わると、見落としが起きやすくなるからです。たとえば次のような内容を、チェックシートを作って全店共通の手順にします。
| 確認する場所 | 見るポイント | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 内側・中央・外側 | 減り方に大きな差がないか | 内側は外から見えにくい |
| タイヤの全周 | 一か所だけでなく、回しながら一周 | 接地面の一部だけが傷んでいる |
| 側面 | ひび割れ、傷、膨らみ | 溝が残っていても劣化していることがある |
| ワイヤー(補強材)出ていないか | 内部の材料が見えていないか | 内側に隠れていることがある |
内側まで確認するように、ハンドルを切って見る、リフトで上げて確認するなど、見える状態にしてから確認することを手順に入れておきます。
2.偏摩耗は、タイヤの交換だけで終わらせない
偏摩耗が見つかったら、タイヤだけを替えるのでは問題解決しない場合もあります。足回りの部品、アライメント(タイヤの向きや角度)に原因があれば、新しいタイヤに交換しても同じように減ってしまいます。
販売会社としては、偏摩耗を見つけたら、原因を調べることも大事です。「交換して終わり」だと、また同じ編摩耗を起こす場合があります。
3.鑑定書の記載を、そのまま信じない
外部の鑑定書に「交換不要」と書いてあっても、納車前に自社で再確認することも徹底しましょう。鑑定の時点から納車までには、日にちが空きます。車を保管したり、移動させたりしている間にも、状態は変わります。
外部の鑑定や整備は、あくまで判断材料の一つです。最終的に「この状態でお渡ししてよい」と決めるのは販売会社ですので、確認ミスがないように、2重チェックも効果的です。
4.納車の直前に、安全に関わる項目をもう一度確認する
納車の直前確認は、時間をかけなくても、効果が大きい対策です。タイヤ、灯火類、警告灯、ブレーキまわりなど、走行に直接関わる項目に絞って、引き渡す直前に確認します。
おすすめは、確認したタイヤの内側・外側の写真を撮っておくことです。お客様に引き渡すときに、一緒に見ながら説明できれば、「ちゃんと見てくれた」という安心にもつながります。
5.記録と写真を残し、お客様に見せる
「点検しました」という言葉だけでは、お客様には何を見たのかがわかりません。確認した項目、タイヤの状態、交換した部品を記録に残し、希望があれば見せられるようにします。
記録は、お客様のためだけではありません。あとから異常が見つかったときに、どの工程で何が起きたのかを調べる手がかりになります。今回のような問題で、原因を速く、はっきり示せるかどうかは、こうした記録が大事になります。
ただし、書類をそろえることが目的になってはいけません。実際に確認した内容を、そのまま正しく書くことが前提です。
6.納車のスピードより、確認の時間を優先する
納車を急ぐあまり、点検や確認がおろそかなることは、どの会社でもありえます。販売台数や納車の早さを大切にするのは自然なことですが、安全に関わる確認の時間は、削らないと決めておく必要があります。
確認に使う時間を、会社として最初から作業時間に組み込んでおく。担当者が「時間がないから」と省略しなくて済む体制をつくる。こうした仕組みが、現場の判断を支えます。
7.問題が起きたときの対応を決めておく
どれだけ注意しても、人が関わるので不具合がなくなることはないです。大切なのは、起きたときにどう対処するかです。
お客様から連絡が入ったら、まず安全を最優先にします。必要に応じて代車を手配し、その車には乗らないでもらい、第三者の点検を検討するといいのではないでしょうか。
お客様が知りたいのは、おわびの言葉だけではありません。この車は安全なのか、どんな対応を受けられるのか、これからどうなるのか。その三つに、具体的に答えることが大切です。お客様の気持ちに寄り添いましょう。
8.原因を調べて公表し、改善の進み具合まで伝える
謝罪や一時的な販売停止は、販売会社としての安全確認するための対処として当たり前の対応です。ただ、それだけでは再発を防げません。
原因を調べ、点検項目が足りなければ見直し、記録や情報共有に問題があれば仕組みを変える。車やタイヤに原因があれば、メーカーとも連携して対処する。調べた結果に合わせた対策を、実際に動かすことが再発防止です。
さらに重要なのは、その後の報告です。再発防止策を発表したあと、実際にどこまで進んだのかを、定期的に伝える。ここまでやってはじめて、「言葉だけではなかった」と受け止めてもらえます。

バディカの対応から学べること、これから問われること
今回、会社側は、謝罪、代車の提供、第三者の点検、全店での確認、該当店舗の自主的な販売停止、代表らによる購入者への直接訪問を行ったと伝えられています。問題が表に出てから、動きが早かった点は、ほかの販売会社にとっても参考になります。
一方で、これから問われるのは、原因の説明と、再発防止の中身です。点検のどの工程で何が起きたのか、記録はどうなっていたのか、今後どう変えるのか。公式リリースでどこまで具体的に示されるかが、信頼を取り戻せるかどうかの分かれ目になります。
これは、バディカだけの話ではありません。同じ業界にいる会社は、自社の納車前の流れを、今回の件に重ねて見直す機会にできたはずです。
まとめ
バディカのタイヤ問題は、2026年10月15日の時点で、原因が公式には示されていません。だからこそ、特定の会社を決めつけるのではなく、「自分の会社なら防げるか」という視点で受け止めることが大切だと考えます。
販売会社に求められるのは、点検を外部に任せたという事実で安心せず、お客様に渡す時点の安全を、自社の責任として確かめることです。確認の手順をそろえ、記録を残し、納車の直前にもう一度見る。問題が起きたときは、安全を最優先に、事実と調査中のことを分けて伝える。そして、原因を調べて改善し、その進み具合まで報告する。
中古車は、一台ごとに状態が違います。だからこそ、一台ずつ丁寧に確かめる姿勢が、お客様の安心と、業界全体の信頼につながっていくはずです。


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