
高速道路はなぜ渋滞する?信号なしでも渋滞する本当の理由
高速道路は、信号がないのになぜ渋滞するのでしょうか。実は、渋滞の原因は事故や工事だけではありません。ほんの少しの速度低下が、後ろの車へと連鎖していくだけでも、渋滞は発生してしまうのです。特に注意したいのが、下り坂から上り坂へと変わる「サグ部」と呼ばれる場所です。
この仕組みを知っているかどうかで、渋滞への向き合い方は大きく変わってきます。この記事では、整備士としての知識も踏まえながら、信号がないのに渋滞が起きる仕組みを、できるだけやさしい言葉で順番に説明していきます。
この記事で分かること
- 信号がなくても渋滞が発生してしまう根本的な仕組み
- 高速道路の渋滞の多くが集中して発生している「ある場所」の正体
- 合流部や追い越し車線で渋滞が悪化しやすい理由
- 渋滞を必要以上に悪化させないために、運転する側ができること
そもそも「渋滞」とはどのような状態を指すのか

本題に入る前に、まずは「渋滞」という言葉が具体的に何を指しているのか、確認しておきましょう。NEXCO各社では、高速道路の渋滞を「時速40キロメートル以下の低速走行、あるいは停止と発進を繰り返す車の列が、1キロメートル以上かつ15分以上続いた状態」としています。つまり、少し車が詰まって速度が落ちた程度では渋滞とは呼ばず、一定の距離と時間にわたって遅い状態が続いて初めて「渋滞」として扱われるということです。
高速道路の渋滞にはいくつかの種類があります。ひとつは、道路の修理や点検で車線が減らされることで起きる工事渋滞です。もうひとつは、事故で車線がふさがれたり、周りの車が速度を落として様子を見たりすることで起きる事故渋滞です。
高速道路の渋滞で多い「交通集中渋滞」

これら工事渋滞や事故渋滞に対して、はっきりした原因が見当たらないのに車が集中することで起きる渋滞があり、これは「交通集中渋滞」と呼ばれています。NEXCO東日本が公表している2024年のデータによると、管内で発生する渋滞のうちおよそ7割がこの交通集中渋滞にあたります。かつては料金所付近での渋滞も大きな割合を占めていましたが、ETCの普及によってこの料金所渋滞はほぼ解消されました。
この記事では、事故や工事のようなはっきりした障害物がないのに起きるこの交通集中渋滞のことを、分かりやすく「自然渋滞」と呼びながら説明していきます。では、この自然渋滞はいったいどこで発生しているのでしょうか。少し意外に思われるかもしれませんが、実は発生場所にはかなりのかたよりがあります。次の章で、その詳しい中身を見ていきましょう。
約6割が集中する「サグ部」とは

NEXCO東日本の2024年のデータでは、交通集中渋滞の発生箇所のうち、約6割が「上り坂およびサグ部」に集中していることが分かっています。
ポイント
交通集中渋滞の約6割は、上り坂やサグ部に集中しています。
出典:NEXCO東日本「高速道路の渋滞対策」公表資料(2024年)
この「サグ部」という言葉、日常生活ではあまり耳にしないです。簡単に言うと、下り坂が終わって上り坂が始まる、道路の谷底のような部分のことです。自転車で坂道を下ってきて、そのまま反対側の上り坂に入っていくときのことをイメージしていただくと、分かりやすいかもしれません。
高速道路を走っていると、平らに見える区間でも、実はごくゆるやかな上り坂になっている場所がたくさんあります。特にサグ部は、下り坂の勢いが残ったまま上り坂に入っていくため、坂の変化そのものに気づきにくいという特徴があります。カーブも少なく道幅も広い高速道路は、一般道に比べてスムーズに走れる分、かえって道路のわずかな起伏に気づきにくいという面もあるのです。この「気づかれにくさ」こそが、渋滞が始まるきっかけになっています。
なぜサグ部で無意識に速度が落ちてしまうのか

サグ部や上り坂に入ると、坂の傾きの分だけ車を進める力が余計に必要になり、それまでと同じアクセルの踏み具合では自然と速度が落ちていきます。人間の感覚は、平らな道とゆるやかな上り坂の違いをすぐには感じ取れません。そのため、ドライバー自身が「坂を上っている」と気づかないまま、車の速度だけがじわじわと下がってしまうのです。
一台の車がほんの少し減速しただけであれば、大きな問題にはならないはずです。しかし高速道路のように交通量が多い状況では、この「わずかな減速」が思いがけない形で連鎖していくことになるのです。ここからは、その連鎖の仕組みをもう少し詳しく見ていきましょう。
わずかな速度低下がブレーキの連鎖を生む仕組み

先頭の車が気づかないうちに速度を落とすと、その後ろを走る車との車間距離が縮まります。すると後続の車はブレーキを踏んで車間距離を取り直そうとします。ところが、ブレーキを踏むタイミングや踏む強さには個人差があるため、後ろの車ほど強めにブレーキを踏む傾向があります。そしてさらにその後ろの車も、前の車の減速に反応してブレーキを踏みます。
このように、先頭でのごくわずかな速度低下が、後続車に伝わるたびに少しずつ強くなり、やがて後方では完全に停止してしまうほどの減速につながっていきます。ドライバー一人ひとりは自分なりに安全な運転をしているつもりでも、その反応が連鎖することで、結果として渋滞という現象が生まれてしまうのです。これが、信号や事故がなくても高速道路で渋滞が発生する最大の理由です。
イメージとしては、こんな流れです。先頭の車が時速100キロメートルから95キロメートルへとわずかに減速したとします。その車間を保とうとした後ろの車は95キロメートルから85キロメートルまで落とし、さらにその後ろの車は70キロメートルまで落としてブレーキを踏む、というように、後ろに行くほど減速の幅がどんどん大きくなっていきます。こうして数十台、数百台と車が連なるうちに、後方の車は完全に停止せざるを得なくなり、渋滞という状態が出来上がってしまうのです。
面白いことに、この減速の連鎖は前へ向かって進むのではなく、後ろへ後ろへと伝わっていきます。先頭の車自体はすでに速度を取り戻して走り去っているのに、後方ではまだブレーキの連鎖が続いており、渋滞の列がどんどん長く伸びていくように見えるのはこのためです。
トンネルの手前も渋滞が起きやすい
サグ部と並んで渋滞が起きやすいとされているのが、トンネルの手前です。トンネルに入る瞬間は視界が急に暗くなるため、思わずアクセルを緩めてしまうドライバーがいます。こうした小さな速度変化が、交通量の多い区間では渋滞のきっかけになることがあります。
実際に、東名高速道路の大和トンネル付近や中央自動車道の小仏トンネル付近は、渋滞が発生する区間としてよく知られています。こうした場所では、交通量の多さに加えて、道路のこうばいなど複数の要因が重なることで渋滞が発生します。こうした場所を訪れる際は、その手前から早めに車間距離を意識しておくと、渋滞に巻き込まれても慌てずに済みます。
合流部でも渋滞は起きやすい

渋滞が発生しやすいのはサグ部や上り坂だけではありません。インターチェンジやジャンクションのように、一般道と高速道路、あるいは高速道路同士がつながる合流部も、渋滞が起きやすい場所として知られています。
合流部では、本線に入ろうとする車を先に通そうとして、走行車線を走る車が速度を落とすことがあります。すると、その後ろを走る車にもブレーキが伝わり、サグ部と同じようにブレーキの連鎖が始まってしまいます。強引な割り込みや急な車線変更によって後続車がブレーキを踏むと、その影響が後ろへ後ろへと広がっていくこともあります。だからこそ、目的地に早く着きたい気持ちがあっても、むやみな車線変更や強引な割り込みは控えたほうがよいとされています。
追い越し車線への集中も渋滞の一因になる
渋滞が起きる前の段階では、追い越し車線に交通が集中し、車線ごとの利用に偏りが生じることもあります。少しでも速く進みたいという気持ちから、多くのドライバーが追い越し車線を選んで走るようになると、その車線だけ交通量が増え、車間距離が詰まりやすくなります。走行車線の流れがどこかで悪くなると、それを避けようとするドライバーがさらに追い越し車線に集まりやすくなり、結果として追い越し車線側も詰まってしまうことがあります。こうした追い越し車線への車線変更の集中が、渋滞を悪化させることもあると考えられています。
ここで一つ知っておいていただきたいのは、渋滞中に車線変更を繰り返したからといって、必ず早く目的地に着けるとは限らないということです。空いているように見える車線も、少し先で同じように詰まっていることが多く、車線変更そのものが後続車にブレーキを踏ませ、渋滞をさらに悪化させてしまう場合もあります。急いでいるときほど、一つの車線を落ち着いて走り続けたほうが、結果的にスムーズに進めることよくあります。
車間距離と渋滞の関係

ここまで読んでくださって、「じゃあ、どれくらい車間距離を取ればいいの」と思われた方もいるかもしれません。渋滞のメカニズムを数学的に研究する「渋滞学」という分野があります。東京大学の西成活裕教授らの研究では、車間距離を十分に確保すること、目安としておよそ40メートル以上を意識することが、渋滞を防ぐ一つの手がかりになるとされています。研究チームが実際に高速道路上で40メートル以上の車間距離を保ちながら走行したところ、渋滞が軽減されたことが確かめられています。
ただし、40メートルという数字は、あくまで研究から導かれた一つの目安です。「40メートル空ければ絶対に渋滞しない」という意味ではありませんので、その点は誤解のないようにしてください。大切なのは、車間距離を十分に取ることそのものが、渋滞の起きにくさにつながるという考え方です。
NEXCO東日本でも、渋滞をできるだけ悪化させないための心がけとして、車間距離を十分に確保することを呼びかけています。車間距離には、前の車が急に減速してもすぐにブレーキを強く踏まずに済むという、いわばクッションのような役割があります。あわせて、むやみな車線変更を控えること、渋滞にはまってしまった場合には先頭を通過したあとに速やかに速度を回復することも呼びかけられています。渋滞の先頭付近で速度の回復が遅れると、それがまた新たな渋滞の種になってしまうためです。
渋滞吸収走行

先ほどの研究から生まれた、ちょっと面白い運転テクニックをご紹介します。それが「渋滞吸収走行」と呼ばれるものです。これは、渋滞や渋滞の予兆に近づいたときに、あえて車間距離を十分に取り、なるべく一定の速度を保ちながら走ることで、前方から伝わってくる減速の波を自分のところで吸収し、後続車にまでブレーキを伝えないようにする走り方です。JAFや警察庁と一緒に行った確かめる実験でも、この走り方によって渋滞の影響が和らぐことが確認されています。
渋滞にはまってしまったときほど、つい前の車に詰め寄りたくなるものですが、実はその逆の行動のほうが、渋滞全体を早く解消させることにつながるというのは、なんだか意外で面白いですよね。
一般道の渋滞との違い
普段、街中を走っているときの渋滞は、信号での停止と発進が繰り返されることが大きな原因のひとつです。一方、高速道路には信号がありません。それなのに渋滞が起きてしまうのは、ここまで見てきたような、坂道の変化や合流といった、目に見えにくいきっかけによって車の流れが乱れてしまうからです。
渋滞予報で「原因不明」とされる渋滞との関係

高速道路の渋滞情報を確認していると、事故や工事といったはっきりした理由が示されず、渋滞という結果だけが表示されていることがありますよね。こうしたケースの背景には、ここまでお話ししてきたようなサグ部や上り坂、合流部での自然渋滞が関係している可能性が考えられます。ただし、個々の渋滞がどの地点のどのような原因で起きたものかをはっきり言い切るには、その時々の道路状況や交通量の詳しいデータが必要になります。この記事の範囲で、特定の渋滞の原因をひとつひとつ言い切ることはできませんので、その点はご了承くださいね。
Q&A
ここからは、ここまでの内容をふまえて、よくある疑問をQ&A形式でまとめてみました。気になるところから読んでみてください。
高速道路の渋滞は、どのような状態になったら「渋滞」と呼ばれるのですか。
NEXCO各社では、時速40キロメートル以下の低速走行、あるいは停止と発進を繰り返す車の列が、1キロメートル以上かつ15分以上続いた状態を渋滞としています。
高速道路には信号がないのに、なぜ一般道のような渋滞が起きるのですか。
一般道の渋滞は信号での停止と発進が主な原因ですが、高速道路には信号がありません。その代わりに、サグ部や上り坂での無意識な速度低下、合流部でのブレーキ、車線変更などがきっかけとなり、後続車にブレーキが連鎖することで、信号がなくても渋滞と同じような状態が生まれてしまいます。
サグ部の上り坂は、なぜ運転していて気づきにくいのですか。
サグ部は下り坂から上り坂へゆるやかに切り替わる区間で、勾配の変化が小さいため、体感で坂を上っていると気づきにくくなっています。そのため、無意識のうちにアクセルを踏み足さず、速度だけが落ちていく現象が起こりやすくなります。
車間距離を40メートル空ければ、渋滞は絶対に起きませんか。
いいえ、40メートルはあくまで渋滞学の研究から導かれた一つの目安です。車間距離を十分に確保することが渋滞を防ぐ助けになるとされていますが、必ず渋滞しないと保証されているわけではありません。
渋滞を悪化させないために、運転する側ができることはありますか。
NEXCO東日本では、車間距離を十分に確保すること、むやみな車線変更を控えること、渋滞の先頭を通過したあとは速やかに速度を回復することを呼びかけています。これらはいずれも、ブレーキの連鎖を後続に伝えにくくするための心がけです。
料金所での渋滞は、今でも起きているのですか。
ETCの普及によって、以前ほど深刻な料金所渋滞はほぼ解消されています。現在の高速道路の渋滞は、料金所よりもサグ部や合流部といった場所で発生する交通集中渋滞が中心になっています。
トンネルの手前で渋滞が起きやすいのはなぜですか。
トンネルに入る瞬間は視界が急に暗くなるため、無意識にアクセルを緩めてしまうドライバーがいます。東名高速道路の大和トンネルや中央自動車道の小仏トンネルのように、交通量の多さや道路の勾配など複数の要因が重なる場所では、さらに渋滞が起きやすくなります。
渋滞吸収走行とは、具体的にどのような走り方なのですか。
渋滞や渋滞の予兆に近づいたときに、あえて車間距離を十分に取り、なるべく一定の速度を保ちながら走る運転方法です。前方から伝わってくる減速の波を自分のところで吸収し、後続車にブレーキを踏ませないようにすることで、渋滞の悪化を抑える効果があるとされています。
高速道路であればどこでも同じくらい渋滞が起きるのですか。
いいえ、渋滞の発生場所には偏りがあります。NEXCO東日本のデータでは、交通集中渋滞のうち約6割が上り坂やサグ部に集中しているとされており、渋滞は特定の土地の形を持つ場所で起きやすい傾向があります。
まとめ
ここまで、信号がないのに高速道路で渋滞が起きる理由について、一緒に見てきました。最後に、押さえておきたいポイントを整理しておきますね。
- 高速道路の渋滞の多くは、事故や工事ではなく「交通集中」による自然渋滞である
- 交通集中渋滞の約6割は、下り坂から上り坂に変わる「サグ部」に集中している
- サグ部では勾配の変化に気づきにくく、無意識の速度低下がブレーキの連鎖を生む
- 合流部や追い越し車線への集中も、同じ仕組みで渋滞を招くことがある
- 渋滞学の研究では、車間距離を十分に確保することが渋滞の抑制につながることが示されている
- 車間距離の確保、むやみな車線変更を控えること、渋滞通過後の速やかな速度回復が、渋滞の悪化を防ぐ助けになる
高速道路で渋滞を完全になくすことはできません。しかし、前の車との車間距離を十分に取り、急なブレーキや無理な車線変更を避けることで、自分の車から後ろへ減速の波を広げにくくすることはできます。
高速道路の渋滞は、決して誰か一人のミスによって起きているわけではありません。人間の感覚では気づきにくいごくわずかな速度低下が、車の列を伝わるうちに大きな渋滞へと育ってしまう、いわば自然現象に近いものです。信号がないからこそ、車と車のちょっとしたやり取りだけで流れが決まってしまうというのは、考えてみればとても興味深いことですよね。
仕組みを知っておくだけでも、坂道での速度維持や車間距離の取り方を少し意識するきっかけになるはずです。次に高速道路を走るときは、平坦に見える道でもわずかな上り坂が隠れているかもしれないということ、そして自分の車間距離ひとつが後ろに続く何十台、何百台もの車の流れに関わっているかもしれないということを、少し思い出してみてください。渋滞そのものをなくすことは簡単ではありませんが、一人ひとりの心がけの積み重ねが、渋滞の長さや辛さを和らげてくれるはずです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
LINK Motor

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